楽譜を書くのも楽しみの一つ
私が長く働いたアメリカと日本を比べて痛感するのは、社会のルールそのものが大きく違うということです。経営者の役割も、社員の在り方も、税や年金の仕組みも異なります。二十年アメリカで納税をした私が最後に思ったのは、「もうアメリカで税金は納めたくない」ということでした。問題だらけの日本ですが、日本には日本のルールがある。いまは、「もう日本で税金なんか納めたくない(怒!)」です。
組織にはその組織のエコノミーがあり、その本質を理解したうえで結果を出す。それが第一歩なのです。
もちろん、ルールが旧態依然として変更が必要な場合もあります。しかし成果を出して周囲に認めさせてからでなければ、ルールを動かす力にはなりません。転職してきたばかりの人が「この会社の仕組みはおかしい」と訴えても、耳を貸す人はいないでしょう。日本は転職そのものが難しい社会ですから、なおさらです。結果として、成長の機会がアメリカより圧倒的に少なくなっているのです。
同じような人材が、変わらない組織の中で長く働き、気心の知れた仲間と「あうんの呼吸」で仕事を回す。表面上は快適ですが、それはまさに井伏鱒二の『山椒魚』の世界です。成長のために広い世界へ出られるはずなのに、自ら小さな穴に閉じこもっている。その状態を「コンフォートゾーン」と呼ぶならば、日本社会全体がそこに安住してしまっているのです。世間をしらない、世襲を繰り返す政治家が多数を占める日本の政治も同じですね。
しかし今や、そのコンフォートゾーン自体が壊れ始めています。サファリパークで安全に「ジャングルごっこ」をしていられた時代は終わりました。フェンスは破られ、外敵は潜入し、決まった時間に餌も出てこない。もはや守られた環境ではなく、リアルなジャングルで生き延びるしかありません。
未来を明るくできるのは、やはり若い世代です。私はもう十分に歳を重ねましたが、去年からアルトサックスに挑戦しています。ジェームス・ブラウンを支えた名サックス奏者メイシオ・パーカーに、一ミリでも近づきたいと日々練習を続けています(一年経っても進歩はありませんが、まだまだ気持ちは前向きです)。
いまの日本は、もはや安全なサファリパークではなくなりつつあります。フェンスは壊れ、外敵は入り込み、餌も約束通りに出てこない。ならばフェンスを立て直すのか、それともジャングルで生きる力をつけるのか。選ぶのは、これからの世代です。
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