2013年2月27日水曜日

日本の自殺

 

昭和50年の『日本の自殺』が新書として出版されました。著者である「グループ一九八四年」は、ジョージ・オーウェルの『1984』を意識したのでしょう。ハクスリーの『素晴らしき新世界』も出てきます。オルテガの『大衆の反逆』も引用されています。

中野剛志氏が解説で指摘しているように、『日本の自殺』が警鐘を鳴らしたことは、バブル崩壊で現実のものになったのだと思います。 日本はその後の20数年にわたり、右肩下がりの低迷を続けています。

ところが、興味深いのは、「バブル崩壊まで」と「その後の20数年」の原因は全く同じだと言うことです。 資産インフレであろうが長期デフレであろうが、日本の問題の本質は、オルテガが言うところの「甘やかされた坊ちゃん」であり、『日本の自殺』で指摘されている「内部からの社会的崩壊」なのです。 福田和也さんも「今の日本は自殺するだけの勢いもなく、自然死してしまうのではないか」と解説しています。    

以下、本文より

人間経験全体のなかに占める直接経験の比重が相対的に低下し、それに代わって、マス・コミュニケーションの提供する情報を中心とする間接経験の比重が飛躍的に増大したことに伴うさまざまなマイナスの副作用について検討しておかねばならない(P94)。

マス・コミュニケーションによって人間がだまされ、知力を低下させられ、真実の視界を妨げられるという皮肉な現象が生ずる結果となる。(中略)情報化のさまざまな代償は、思考力、判断力を衰弱させ、情緒性を喪失させ、幼稚化と野蛮化の社会病理をとめどもなく拡大していくこととなり、日本社会の自壊作用を強めるのである(P102

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2013年2月26日火曜日

映画 『アルゴ(ARGO)』

映画『ARGO』監督・主演のベン・アフレック

第85回アカデミー賞は、『ARGO(アルゴ)』(ベン・アフレック監督・主演)が作品、脚色、編集の3賞を制しました。『ARGO』は、イランの米大使館占拠事件が題材です。偽の映画制作を口実に、CIA工作員が大使館員を救い出すという実話に基づいた映画です。

ここ一年で観た映画の中で『ARGO』が一番面白かった。 映画の時代設定は、1979年のイラン革命の時です。 当時、ボストンにいた私は、混迷のイランから脱出してきたイラン人青年とダウンタウンで一つの部屋をシェアしていたのです。だから、パーレビ(シャー)とかホメイニーだとか、イラン人質事件がやたらと身近に感じて心に浮かぶのです。

イラン人青年マホムド君は、テヘランのスーパーの店員でした。やっと貯めたお金で航空券を買い、着の身着のままイランから脱出して来ました。 英語は片言もできませんでした。 「イランを立派な国にするためにアメリカで勉強するんだ」とやってきたのです。 部屋では一日中英語の辞書とにらめっこですが、逼迫するイラン情勢の中、テヘランにいる両親のことが心配でなりません。 イスラム教徒のマホムド君は、一日に5回決まった時間にお祈りをします。 食品の中に豚のエキスが入っているだけで食べることができません。 もちろん、お酒は飲みません。 そんなマホムド君と、高度成長期の日本から来たチャランポランな私の共同生活でした。

映画『ARGO』は、車、ファッション、電話、ヘアスタイル、、、、どれ一つをとってみても1979~1980年にタイムスリップしたような感じでした。 ベン・アフレックのテンションの低い(low key)主人公はよかったですが、全く個人的な感傷から『ARGO』はよかったのでした。  

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2013年2月25日月曜日

脳の働き

東京都葛飾区のホームページ ~ 障害福祉より

オバマ大統領は、先日の一般教書演説(State of the Union)で、人間の脳機能を更に解明するプロジェクトに言及しました(brain mapping)。 脳外科手術が進歩して救命措置はできても、脳に関して解明されていないことがまだまだ多いそうです。 オバマさんは、アルツハイマーや脳卒中(brain attack)が増え、研究にお金を費やしても経済効果がある(pay off)と説明しています。

大脳には様々な機能が分化しています。 前頭葉は全体をバランスよくコントロールする、つまり、ものを考えたり動作の指令をするところです。 頭頂葉はものを感じ解析するところ、後頭葉は視覚情報を取り入れ解析するところです。 また、側頭葉は記憶や言語、音の解析を行います。 そして、生まれてから獲得した知識が脳の記憶装置に蓄積されていて、一瞬にして状況を判断したり、本を読んでも文脈を理解することができるのです。 

脳は生きていて、もし損傷したらダメージを受けた部分を補うために、脳のその他の部分が本来の構造を変化させて、役割を変えるという性質があるといいます(脳の可塑性)。 脳卒中などで、言語中枢に障害があると、リハビリの過程で、言語中枢以外の部分が言語中枢の役目を果たしていくということです。 

子供のころから脳全体をバランスよく使うような教育ができるといいですね。   

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2013年2月23日土曜日

行蔵(こうぞう)は我に存す

家庭にリーダーがいなければ子供にリーダーシップは芽生えない。会社組織でも同じです。リーダーが決断する姿を見て、組織全体に尊敬と信頼の関係が生まれるのです。

福沢諭吉が「痩我慢の説」で勝海舟を批判したとき、海舟は下の言葉を返しました。

「行蔵は我に存す,毀誉は他人の主張,我に与からず我に関せずと存じ候」

「行蔵」とは出処進退のことです。他人が何を言おうと自分には関係ない。自分のやることは自分で決め、自分で責任をとるのだと言っています。勝さん、好きですよ。

大学生の皆さんには、周りが何を言おうと自分で決めて人生の選択をしていってほしい。政権を担う政治家には、周辺の国が何を言おうが「行蔵は我に存す」で貫いてほしい。











子犬のCharlieと私の間に信頼関係は生まれるか?  

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2013年2月22日金曜日

リーダーシップは育たない

日本に、リーダーシップが重要だという認識がどれ程あるのか疑問なのですが、日本というのはリーダーが育ちにくい環境にあることは間違いないと思います。

日本という国は、良く言うと優しい、しかし、過保護であることが常態化している。自分で難しい選択をしなくても、ちゃんと生きていける仕組みが出来上がっています。しかし、「もっと、もっと」という要求は増大し、いつか破たんするのです。だから、苦渋の決断もして行かなければならない。 それはリーダーシップであり、リーダーの役割です。

日本はリーダーシップが育ち難い土壌です。リーダーシップは、人生の中で苦渋の選択を繰り返しながら芽生え、強化されていくからです。人は、厳しい決断ができる人を見て、その人をリーダーと呼ぶものです。

社会なのか世間がお膳立てをして、それに乗っかっていれば、ほぼ間違いなく生きていける状況であれば、リーダーシップは育たないと思うのです。成長する環境が、リーダーシップの「cradle(揺りかご)」にも「incubator(保育器)」にもならないから。

"cradle of leadership"

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2013年2月19日火曜日

漱石が悩んだこと

夏目漱石は講演録のほうが小説よりも面白いと思います。 『道楽と職業』、『現代日本の開花』、『中味と形式』、『文芸と道徳』、そして、『模倣と独立』は、同時期の漱石の講演です。 全編を何度も何度も読み返すと、私のような貧弱な読解力でも何となく漱石が悩んだことが分かるような気がします。 漱石が生きた時代背景も照らし合わせて読むと、10代20代に読んで面白くなかった漱石の小説も面白くなるのです。

漱石は、明治の文明開化から日清日露戦争の時代を生きて、日本人の精神的な危機を感じたのでしょう。政治的危機を乗り越えて、これから経済危機を乗り越えても、さて、今の日本は精神的危機は乗り越えられるのか? 国家と国民の役割って大事です。

私は子犬の成長を見守りますか

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2013年2月18日月曜日

本当のセイフティ・ネット

http://sankei.jp.msn.com/life/news/130218/edc13021803230000-n1.htm

「だから問題は、学校も家庭も地域もむしろ『近代化』してしまって、『前近代的』な人間同士の触れ合う場がなくなってしまった点にある」(本文より)。 

アメリカの知識層って、ここ20年かけてこういったことに徐々に気づいていったのではないかと感じます。 お金と契約だけの社会に疲れ果てた末に、、、。 少し言い換えると、アメリカの一部の人たちは、自分のことだけを考えることに嫌気がさして、組織とか地域の一員であることでセイフティ・ネットをかけようとしているように思います。 

日本は元々あったものをグローバル化のスローガンの下に粉々にされて、これからの時代に合うように再構築しなくてはいけないでしょう。 中国は破壊の継続中でしょうね。

私の机の上にアベノボトル?

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2013年2月17日日曜日

自分を知るには?

孫氏の兵法の 「知己知彼、百戦百勝」はご存じだと思います。 「知己」を軽んじてはいけない。 自分を知ることが重要なのですが、これがなかなか難しい。 一つのタコ壺の中で、自分は何ができるかと考えてもダメです。 タコ壺から出て、様々な人と交わったり、試練を乗り越えながら少しずつ自分が見えてくるのでしょう。 私はこれまで色んなタコ壺を出入りしてきましたが、いまだに自分が見えているか怪しいものです。

日本の大学生の就職活動は、自分を知る作業の第一歩だとすると、もしかしたら無駄なプロセスでないのかも知れません。











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2013年2月15日金曜日

知行合一


最近、「知行合一」という言葉が頭から離れません。 なかなか奥が深い。 知ることと行うことが一致するだけでなく、アウトプットを意識しろということのようです。 大量のデータをインプットし、高速に頭を回転させることだけじゃダメだということです。

偉大なロックギタリストは常にアウトプットを意識します。 ヘッポコギタリストの私はギターにひかれます。
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2013年2月13日水曜日

「孫子の兵法」で教育改革したら?


このスライドは10年ほど前に、コンサルタント経験10年未満の若い人たちに話をしたものです。クライアントに提案書を提出する場合の注意事項を学習してもらうのが目的だったのですが、子どもたちの教育においても同じだと思います。

【道】先生(学校)、父兄、子供たちに共通の認識はあるか? 他者と関わる前に、それぞれが自分自身をどこまで理解しているのか?

【天】行動をとるタイミングは正しいか? 時宜にかなっていることは何か? 人生は永遠じゃない。万物流転、行動せずに後悔しても遅い。

【地】状況判断は間違っていないか。 取捨を断ずるにあたり、新聞TVを盲信していないか?

【将】両親兄弟以外に、あなたのことを心から考えてくれるメンターがいるか? 上司や仕事仲間は尊敬できるか、信頼できるか?

【法】あなたが成長するために必要な養分を吸収する体制は整っているか?

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2013年2月12日火曜日

チームビルディングとリーダーシップの関係


リーダーの役割は、「リーダーがいなくても任務が完了するチームを作ること」でもあります。 チーム・ビルディングとリーダシップとは密接に関係しています。 スライドの一番左は、日本に多く見うけられる「タコつぼ型」の組織です。 指示する管理職がいつも見張っていないといけない上意下達の組織です。

日本の教育システムで育つと、セルフ・モチベート(自分で動機付けする)ことが出来るようになりにくい。 社会が優しく、否、過保護(coddle)ですから教育もそれに準じて知識・スキルに重点が置かれていると思います。 

モチベートするのは親であり、教師であり、社会であると考えていないでしょうか?

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2013年2月11日月曜日

試練は大人になると試煉(火へん)になる

試練を避けるのが頭のいいやり方だと思っていませんか?

最近、facebookで大学生と議論をしています。長年当たり前だと思っていたことを如何に分かり易く伝えるか、非常に私自身の勉強になっています。 以前、このブログでも紹介したことのある、上のスライドに関して学生たちと議論をしていると、台湾のカブちゃんが面白いことをFBPOSTしてくれました。  

「試練」は旧字体では「試煉」です。チャレンジはたぶん、死ぬまで、そしてどんどんハードルが高くなっていくのでしょうね。チャレンジは若いころは「練」習、年を重ねる毎に本物の試「煉」 Fire Fighting になっていくのだと思います。 北京語の諺を一つ。 『真金不怕火煉』……本物の金は焼かれることを恐れない。 人間も本物は、身を焼かれるような試煉を恐れないもの。

漢字を簡体字やハングルにしてシンボル化すると、考える要素がなくなり、どんどん愚民化が進むのでしょうね。 小学生の英語教育よりも漢字を旧字体に戻した方が、中長期的には随分と価値のあることかも知れません。

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2013年2月9日土曜日

リーダーの役割


ようやく日本のビジネス界は、高度成長管理スタイルから知的労働センス&レスポンドスタイルにパラダイム・シフトしつつありますが(ホント?)、教育界に求めるのは無理なのでしょうか? スポーツの世界だって同じですよね。 教える側の信頼性がないのに信頼関係を求めてどうするんだ? もう少し知的にやってもらいたいものです。

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2013年2月7日木曜日

動かし、育て、結果を出させるには?

子どもは親のように成長します。 親が正しいプリンシプルのものとに毎日を楽しんでいないと、子どもたちが才能や創造性を発揮できるはずがないじゃないですか。

実は、多くの日本企業がかかえている問題も同じなのです。 立派な人格が形成されないまま年功序列のもとに上司になった人は、「コントロールする管理職」と「部下の力を引き出そうとする、つまり、エンパワーするリーダー」の違いが分かっていない。 高度成長期は上意下達の管理でもよかったのですが、そういった産業構造がパラダイムシフトして何十年も経っています。 なぜ、日本がキャッチアップできないか? 一つの原因は、マスメディアや知識人と言われる人たちが、深い意味を理解しないまま、言葉だけを日本に紹介するからでしょう。 ワークライフバランスやエンパワーのように。

子どもの教育(家庭と学校の両方)、日本企業がかかえる問題、共通項は多いですね。 気づいて勇気をもって取捨を断ずる者だけが生き残るのでしょう。 

ところで、昔の日本人はわかっている人が多かったのですよ。

山本五十六

やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、ほめてやらねば人は動かじ
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず










老犬介護から3年。 ベイビーがやって来ました! 子犬のしつけも同じか?

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2013年2月6日水曜日

信頼関係の構築なんてハードルが高すぎる

明治のリーダーの一人 ~ 柴五郎 陸軍大将

これから社会人になる学生さんたちには、管理職ではなく、知識労働者の時代を生き抜く本物のリーダーになってもらいたいですね。 アメリカだって様々ですが、コントロールに主眼をおいた管理職ばかりでなく、リーダー、すなわち、アメリカで言うところのマネジメントが一定の割合で存在します。 マネジメントとは、能力もありますが、高いレベルの人格を備えた人です。 中国は「コントロールする人が管理職」という意味合いが強い、恐らく日本より強烈です。

最近、信頼関係の構築ってさんざん聞かされますね。 柔道で信頼関係がどうだとか、学校での体罰がどうだとか。 中国艦艇のロックオンよりも、スポーツの話題のほうが取扱いが大きい。 でも、ちょっと待ってください。 他者との信頼関係の構築の前にやることはないのでしょうか? つまり、自分の信頼性を高めることです。

社会人になる前に、ある程度の人格と能力が備わっていないのに、いきなり信頼関係の構築なんて、ハードルが高すぎる。

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2013年2月5日火曜日

対中投資の難しさ ~ PM2.5で目が覚めるか?

このスライドは、ほぼ10年前のものです。 日本からの環境技術支援は、何十年にも渡り行われています。 問題は、移転された様々な技術の定着が10年経っても達成されない点ではないでしょうか?
日本政府の対中ODAは、有償3兆円、無償1500億円、技術協力1500億円にのぼっています。 今回のPM 2.5で目が覚めるか? どうでしょうね、、、、(日中双方ですよ、念の為)。
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2013年2月3日日曜日

日米の意思決定プロセスは同じ?


企業内での意思決定のプロセスは、日米間で大きく異なるわけではないと思います。

稟議(Ringi)という名称こそありませんが、関係各位間(ステーク・ホールダー)での根まわしや、合意形成(コンセンサス・シーキング)は、アメリカ企業は日本より周到に行うような気がします。アメリカ人って末端に至るまで黙っていませんからね。そのために、たまにはコンサルタントが黒子のように組織を縦横に暗躍します。

勿論、最後はリーダーが英断したように見せかけますが。

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2013年2月2日土曜日

中国で仕事をする難しさ

経済産業省 資源エネルギー庁 HPより

2002年か2003年、「ゴミ処理技術を中国に定着させ、環境(大気)汚染を何とかしないと地球は滅びる」というような議論を真剣にやっていました。 当時、156年ぶりに中国に戻った私は、青空がないことに一番驚いたからです。 北京から二百数十キロ離れた石家庄に北京市のためのゴミ処理プラントを作らないかという具体的な話をしたこともあります。 我々に専門知識がなかったこともあり、議論は発展しませんでした。 あれから10年、北京の空は大変なことになっています。

中国が成長を続け、今後、国民の生活レベルが更に高まれば、エネルギーの更なる大量消費、大量廃棄は必然です。 エネルギーを求めて覇権的な行動は拡大するだろうし、環境破壊はさらに深刻となります。 すでに地球規模の問題です。

中国の場合、技術移転が定着しないという問題が大きいと思います。 移転技術を定着させ、改良させ、更に発展させる忍耐力と謙虚さがないと技術は移転できないのです。 軍事力よりも、汚染処理のような国産技術を発展させ、内需を拡大させ、国民の6割を占める農民が幸せになってはじめて中国は立派な国になると思いますよ。

中国で仕事をする難しさは、短期的、超資本主義的な人心をどうチェンジマネージ(意識改革)するかです。 アメリカ人から見たら、日本人と仕事をするときの難しさは、日本人をいかにチェンジマネージするかだと言うかもしれませんね。 アメリカ人だって、いっぱい問題はあるのに、、、、。

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2013年2月1日金曜日

アメリカで働くために必要なもの ~ 会社とは?


① 日本の会社(Kaisha)
② 日本にある外資系の会社(日本XXXX)
③ アメリカの大企業(corporation)
④ アメリカの通常の企業

アメリカで働く場合、ビザの問題、英語などコミュニケーションの問題もありますが、そもそも、日本の会社とアメリカの企業はかなり異なります。 どちらが良い悪いというのではなく、意識しておいたほうが、アメリカで働く場合の生存率は高くなります。

このスライドには、起業(entrepreneur)やパートナーシップは含まれていません。 要するに、どこで働こうが、その組織にはその組織のエコノミーがあり、やり方があるので、それを理解して行動することが大事だということです。

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