2025年10月4日土曜日

AIが生み出す幻想と「本物」の行方

出典:TECHGIG誌
 

OpenAIの動画生成AI「SORA2」がリリースされました。これを機に、私がこれまで懸念してきた「情報化」についての問題を整理しておきたいと思います。


情報化、つまりデジタル化が進むことは、世界のすべてが情報に還元されていくことを意味します。そこでは「本物」と「ニセモノ」という二元論はもはや成立しません。サイバースペースの世界は、誰もが自由に表現できる代わりに、多義的で収拾のつかない空間となりつつあります。その結果、私的所有権や表現の自由といった概念さえ揺らぎ、私たちが前提としてきた価値の多くが変容し始めています。

ここで「フェチ」という概念を思い起こします。フェティシズムとは、対象そのものの性質ではなく、そこに特別な意味や精神性を投影してしまうことです。たとえば、私はルイ・ヴィトンのカバンに特段の魅力を感じませんが、ある人々にとっては無上の喜びをもたらす存在です。これはまさにフェティシズムの一例です。さらに、学校の教師が児童の写真を隠し撮りして収集・共有するという事件もありました。これは異様な対象への執着、フェティシズムの歪んだ形に他なりません。

AIが進化する世界は、この「幻想」の力を加速させます。本物とニセモノの区別はますます曖昧になり、私たちは共同幻想の中で生きるようになります。すでに現代社会は、情報技術によって作られた虚構を「現実」として受け入れる方向に進んでいるのです。

とりわけ、世間の「空気」で行動を決めがちな日本人にとって、これは危険な状況です。気づかないうちに、国全体が存亡の崖っぷちに立たされることになりかねません。

答えはまだ見えていません。しかしだからこそ、現状を正しく認識し、法制度や教育のあり方を柔軟に更新していく必要があるのです。

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