私はアメリカで仕事をしていた頃、1989年から1993年の期間は、マンハッタンの 590 Madison Avenue にオフィスがありました。このビルはトランプタワーに隣接しており、両者は「バンブーガーデン」と呼ばれるパブリックスペースを共有していました。特別にトランプ氏に関心を持っていたわけではありませんが、ニューヨークで仕事をしていると、彼の噂は自然と耳に入ってきました。
倫理観だけでは理想論に終わります。スキルだけでは冷たいテクノクラートになります。野心だけでは危険です。この三つが均衡してこそ、社会に価値を生む人材になるのではないかと信じてきました。しかし改めて考えると、それは「integrity of character」、すなわち人格の統合という意味に近いのかもしれません。自分の信念と行動が一致していること。圧力や誘惑に直面しても、価値観を曲げないこと。これは経済的機能ではなく、人間の在り方そのものです。知行合一ということです。
映画『Scent of a Woman』で、アル・パチーノ演じる退役軍人が「INTEGRITY」を語る場面があります。そこでの訳語は「高潔さ」でした。若者が権力や同調圧力に屈せず、自分の良心に従う姿を擁護する演説です。あの場面は、インテグリティが単なる機能ではなく、人間の尊厳に関わる言葉であることを示していると思います。
そこに映っていたのは、英雄ではなく、市井の人々でした。広い道路、郊外の住宅、キッチンのある家庭、仕事帰りの父親、笑ったり口論したりする家族。私はそれらを通して、アメリカの街並みや一般家庭の空気を、知らず知らずのうちに刷り込まれていったのだと思います。そして、大いにアメリカに憧れ、英語という言葉にも自然と興味を持つようになりました。小学生の頃、最初に覚えた英語は「Gone with the Wind」でした。
第二の違いは、契約の考え方です。日本では「請負」という発想が強く、成果物の完成を目的として対価を得るという関係が一般的です。しかし、欧米のコンサルティングビジネスでは、原則として請負契約は結びません。クライアントとの間に相互の信頼関係を築いたうえで、委任契約、いわゆる Times and Materials (日本の法律では準委任契約)で仕事を進めます。これは弁護士との契約と同じ発想です。成果を「保証する」のではなく、専門性と誠実さをもって最善を尽くし業務の遂行が契約の本質になります。