2011年2月28日月曜日

日本製のパスタは最高!


日本製パスタを使って、ウチで作るスパゲッティが最高ですね。小麦を細かくしてふるいにかける小麦粉製造工程に秘密があるのではないかと勝手に想像しています。

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2011年2月27日日曜日

映画「いまを生きる」(1989年)

本日は短く単刀直入に。

日本の学校は依存心の基礎を固め、日本の社会は学校で培った依存心を発展させる場のように感じます。 国が頼りにならないのであれば、どうしましょう? それでも待ちますか? 若い人たちには、自分の人生は自分で決めて欲しいものです。

久しぶりに、映画『いまを生きる(Dead Poets Society)』を見ました。「Seize The Day(Carpe Diem)」がテーマの映画です。このブログで度々言及しました。 主人公の先生が教科書を破り捨てて、生きることの素晴らしさを教えようとします。日本の教育システムは真逆のような気がします。

(過去も未来も考えず)今を生きているのは日本の政府だけだったりして、、、余計なことでした。

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2011年2月26日土曜日

1852年 世界が見る日本

マクファーレン著
草思社

1852年、ニューヨークで『The Empire of Japan』という本が出版されました。江戸時代の政治・経済や日本人の性格や教育レベルまで様々な情報を収集し分析しています。当時の英米の対日観です。この本こそが、黒船でやって来たペリー将軍の参考書だったのです。ペリーは、交渉の相手国のことを事前に勉強していたのです。米墨戦争でメキシコからテキサスやカリフォルニアを併合したアメリカ軍の猛将ペリーは、兵法「知己知彼、百戦百勝」の「知彼」を実践し、「次は日本だ!」と日本のことを学習していたのです。マッカーサーよりも謙虚な軍人だったかも知れませんね(!?)。

『日本』には以下のことが書かれています。江戸の町から江戸湾に浮かぶ黒船を眺めるのもいいですが、ペリーの視点、つまり、アメリカが日本をどう見ていたかを学ぶことは大変重要なことだと思います。

  • 日本には二人の皇帝がいる。将軍は世俗権力を掌握する皇帝、神の子孫である帝は日本人の心の将軍であり、軍隊を保持していない。
  • 日本は自由で独自の発展をとげている。
  • 日本は世界で一番教育が行き届き、どんなに貧しい農民さえ、少なくとも読むことができる。
  • 日本は平和で庶民により治安が保たれている。
  • 日本では女性の地位は高い(他のアジアの国と比較して)。
  • 日本人は礼儀正しく社交的である。
  • 日本人は花が好き。日本人はタバコが好き。
  • 日本人はよく働き、遊ぶことも大好きな国民である。

なぜ、歴史を学ぶか?日本の歴史を学ぶのは、日本や日本人を知ること、つまり、アイデンティティの確認です。今日は2月26日、75年前に二・二六事件が起こった日です。日露戦争の戦費調達をニューヨークのユダヤ人銀行家シフ相手に行った高橋是清も殺害されました。二・二六事件から、近代国家と天皇の関係を考えるか、それともただ単に右翼青年将校のクーデター未遂と片付けるかどうか、、、奥は深いですね。

さて、第三の開国を唱える日本政府は、他国が日本をどう見ているのか、しっかりとした認識はあるのでしょうか?

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2011年2月25日金曜日

ユダヤ人の生きる姿勢

樋口季一郎 陸軍中将

ユダヤ人(ジューイッシュ)の生き方は、今の日本人にとってお手本になるものです。ところが、日本でジューイッシュが話題になることは、全くと言っていいほどありません。ユダヤ人は、1948年にイスラエルが建国されるまで、1800年もの間、自らの国を持ちませんでした。

アメリカ、特に東海岸でのジューイッシュの存在感は非常に大きいものです。アメリカ全体でジューイッシュの人口は2%前後ですが、ニューヨークでは約20%です。ウォールストリートの金融街、医師、弁護士、教師、コンサルタント、芸術家など知的な職業に就くジューイッシュが非常に多い。ジューイッシュの家庭は非常に教育に熱心です。お母さんたちは、まさに孟母三遷(もうぼさんせん)、子どもの教育のためには引越しも厭わずです。国が存在せず、または、信頼できないのであれば、世界のどこでも生きていく生命力、スキルが必要だという精神が受け継がれているのです。日本には、まだ列島があります。ジューイッシュの生きる姿勢をお手本としながら、日本は日本の危機意識を持って復活してもらいたいですね。

イスラエル建国の功労者 樋口季一郎中将

さて、実はジューイッシュと日本は関係が深いのです。戦争遂行には膨大な資金が必要でした。日露戦争の軍費は、ニューヨークのユダヤ人銀行家ジェイコブ・シフが日本の戦時国債を大量に購入したことによって賄われました。このシフの強力な資金援助がなかったら、日本の勝利と帝政ロシア崩壊はなかったでしょう。シフの融資の理由は、帝政ロシアでの反ユダヤ主義に対する報復だったのです。

ユダヤ人社会では、二人の日本人がイスラエル建国の功労者として称えられています。日本帝国陸軍の樋口季一郎(ひぐち きいちろう)中将と安江仙弘(やすえ のりひろ)大佐です。日本人、それも、日本帝国陸軍の軍人がイスラエル建国の功労者だと言われてもピンと来る日本人は少ないと思います。もしご存じなければ、この機会に是非とも覚えておいて下さい(エラそうですね、、、失礼しました)。

日華事変勃発直後の1938年、ナチスの迫害から逃れるために、多くのユダヤ人がソ連・満州国境沿いにあるシベリア鉄道オトポール駅まで避難していました。第二次大戦中、ソ連のユダヤ人も多くがシベリアに連行され強制収容所で亡くなっています。樋口は、ユダヤ人難民を満州に入境させる措置をとりました。満鉄から救援列車を満州里駅まで出して、国境を歩いて渡った難民を収容しました。ドイツ外務省は、当時、日独同盟を結んでいた日本政府に対して猛烈な抗議をしたそうですが、樋口の上司であった東条英機は「人道上の配慮からだ」と突っぱねたのです。

安江大佐は、ユダヤ難民の満州への移住計画を主導しました。日露戦争の軍資金をユダヤ資本に頼った経験から、戦費捻出のためだったとも言われますが、事実として多くのユダヤ人の命を救ったことには違いありません。安江大佐は終戦直後ソ連軍に逮捕されシベリアに抑留され1950年、ハバロフスク収容所で病死しました。満州で救われたユダヤ人のうち6000人が大連から船で敦賀に上陸し、その後、汽車で神戸にやってきました。いまでも神戸にはユダヤ教の会堂であるシナゴーグがあります。

東条英機だけでなく、満鉄総裁であった松岡洋右も樋口季一郎と協力してユダヤ難民を保護しています。東条も松岡も極悪非道の戦犯というのが学校で教える歴史ですね。学校が教えないなら、親が賢くなって子どもに伝えるしかないのです。

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2011年2月24日木曜日

日本国憲法前文を読んでみよう

「日本には世界に誇れる憲法九条があるではないか。憲法九条を世界に輸出しようではありませんか!」と、ある教育者の方が声高に叫ばれるのを聞いたことがあります。今日は、日本国憲法の前文を分解してみましょう。

最初のパラグラフ。これは、リンカーンの有名なゲティスバーグ演説のパクリですね。日本語訳(つまり、憲法前文!)には、以下のことが書かれています。

  1. 主権在民は、選挙によって選ばれた代表者を通じて行う
  2. 我々と我々の子孫のために主権が国民に存する
  3. 他国民との協和の恩恵を確保する
  4. 自国が自由であるという恩恵を確保する
  5. 政府が再び戦争を起こさないように主権は国民に存する

南北戦争直後、リンカーンはゲティスバーグ演説で何を訴えたかったのでしょうか?「人民の(of the people)人民による(by the people)人民のための(for the people)政府」は誰もが知っているフレーズです。 しかし、リンカーンが本当に言いたかったことは、「勝った側も、敗けた側も、戦争で死んだ人(honored dead)は犬死にじゃないんだ」ということです。日本国憲法前文を作成したアメリカ人は、そのことを理解していたことは間違いないと思います。つまり、日本敗戦後、今ある平和は、多くの犠牲のもとにあるのだということを伝えたかったのでしょうね。しかし、日本語訳は、本来の目的を反映していないのです、意図的なのでしょうか?

二つ目のパラグラフ。われわれ日本人が強く望むこと(desire)に関してです。

  1. 恒久の平和を念願する
  2. 人間相互の関係を支配する崇高な理想を自覚する
  3. 平和を愛する他国の公正と信義を信頼して(trusting in the justice and faith of the peace-loving peoples of the world)、自分達の安全と生存を保持しようと決意する
  4. 国際社会で名誉ある地位を占めたいと強く望む(国際社会とは平和維持、専制と隷従、圧迫と偏狭を除去しようと努めている社会)
  5. 全世界の国民が、恐怖と欠乏から免れ、平和に生存する権利を有することを認識する

多くの人が支持している日本国憲法の中では、国民が信ずることが三つあります。

  1. いづれの国家も他国を無視してはならない
  2. 「政治道徳(political morality)の法則」は普遍だ
  3. 「政治道徳の法則」を遵守するのは、各国も同様に責務を果たすことに依存している

最後に、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓って(pledge)います。

如何でしたか? 学校で教わったのと同じでしたか?

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2011年2月23日水曜日

サザエの殻(写真)


サザエの殻

ES335

国が人民の殻(から)でない今の日本、パンダのようにワシントン条約で絶滅種に指定してもらい保護してもらうしか日本人生存の道は無いのでしょうか?

1881年(明治14年)、福沢諭吉46歳。外交政策論である『時事小言』を発表しました。若い頃から内外で見聞を広めた福沢諭吉は、「日本にとって大事なことは、国力を増強し、独立主権を目指すことだ」と、強く思ったのでしょう。

殻の外の「喧嘩異常なる」って、チュニジア、エジプト騒乱に端を発する中東情勢であり、中国の軍拡、北朝鮮の核問題、プーチンロシアの脅威、欧米の経済状況、、、「殻」たる政府が取り組まなければならないことは枚挙に遑がないですね。「気がついたら殻と共に魚市場のまな板の上だった」なんてことがないようにしてもらいたいものです。それとも、ヤドカリにように、別の「殻」を探さなければならないのでしょうか?

「俚話(りわ)に、青螺(さざえ)が殻中に収縮して愉快安堵なりと思ひ、其安心の最中に、忽ち殻外の喧嘩異常なるを聞き、窃(ひそ)かに頭を伸ばして四方を窺(うかが)へば、豈(あに)図らんや、身は既に其殻と共に魚市の俎上に在りと云ふことあり、国は人民の殻なり。其維持保護を忘却して可ならんや」(俚話:巷の話)。

福沢諭吉は大阪生まれの武士でした。10代の頃は居合と同時に漢学を学び、緒方洪庵の適塾では自然科学を学びます。江戸に出たあと、横浜の外国人居留地の見物に行ったら、専ら英語が使われていて、自分が学んできたオランダ語が全く通じずショックを受けています。24歳でした。この時から英語を猛勉強し、1860年、勝海舟と共に咸臨丸で渡米することになりました。

1862年(文久2年)、27歳の福沢諭吉は、幕府使節団の一員としてヨーロッパ各国を訪問しました(この年、新渡戸稲造が岩手で誕生しました)。欧州に行く途中、香港、シンガポールで植民地主義・帝国主義を目の当たりにしたのです。アジア人が白人によって虫けらのように扱われるのを見てショックだったでしょうね。ロンドンでは万国博覧会を視察し、蒸気機関車や電気機器に触れました。樺太の国境問題の交渉でロシアにも行っています。帰国後『西洋事情』を書いています。1867年には再度渡米、帰国後は『西洋旅案内』を書き、教育活動に専念して行きます。

漢文からオランダ語、英語。人文科学から自然科学。江戸から明治。日本から海外、それも、アメリカ、アジア、ヨーロッパ諸国。クロスオーバーですねぇ、ギタリストでいえば、先日グラミー賞を受賞したラリー・カールトン(ミスターES335)みたいな人です。

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2011年2月21日月曜日

書物を読む力があれば、、、

Experienced balls on sale! $5

NY Westchester Golf Range
(ロストボールなんて言っちゃだめですよ!)

ゴルフをしなくなって3,4年になるでしょうか。とうとう、へなちょこゴルファーの域を脱出できませんでした。一時は熱中したものですが、恐らく熱中の度合いが足りないのと、センスの問題でしょう。ゴルフは、間違ったスイングのままいくら練習してもダメです。間違ったスイングのまま一生懸命練習を続けた場合でも、そこそこのスコアがでるようになるかもしれません。しかし、コンスタントに80台のスコアでラウンドすることは難しいのです。

教育でも同じ事が言えるのだろうと思います。一生懸命勉強すればするほど、先生の言うことを聞けば聞くほど、世界の常識から遠ざかっていく場合もあるのです。学校で教わることを全否定するのではありません。知育、徳育、体育、そして、ある程度の社交性は集団生活の場が必要ですから、学校の役目は重要です。しかし、方向性の確認や修正には読書が必要です。やはり、偉人と言われる人の発言や、著名な小説家が書き残したものには示唆に富むことが多いのです。

ある財団法人が現代人の読書実態調査を行っています(2009年統計)。全国の中学生・高校生 1239人、成人1550人を対象に実施。

読書量が一番少ない年代は30代
成人の読書しない理由のトップは「仕事、家事、勉強が忙しくて本を読む時間がない」
中高生の読書しない理由のトップは「本を読まなくても不便はない」
親が読書するほど子どもは読書「好き」の傾向

1ヶ月間に読む本の平均冊数は、「1冊」が29.2%と最多。1冊も本を読まない「0冊」は23.7%で、中でも30代は27.4%と他の年代に比べて一番多い。

50%以上の人が、月に1冊しか本を読まないか、全く読まないと言うのは驚きですね。教育者でもある新渡戸稲造さんは、女学校の卒業式のゲストスピーチで心憎いコメントをしています。

まず書物を読む力があれば、世の中の事は大概間に合ッて行く故に私はこの卒業せらる方々によく記憶して戴きたいと思うことは、書物を読む力を失わぬようにせねばならぬこと。書物というものも実際の問題になッて読めるぞと安心しておるうちに、力というやつは妙に蒸発するやつで、殊(こと)に口でも開いていようものならスーッと逃げてしまう。よく口を締めてから、油断しないで読書力を続けてやらんければならぬそれには人の妻になろうがなるまいが、女房たる以上は努めて一日に十分でも二十分でもよいから、書物を読むという途(みち)を作ッておくことが必要である。日に二十分か三十分位はきッと本を読む。日に二十分や三十分の時間というものは、どうやッても出来るものである、工夫さえすれば、御飯時だろうが、何だろうが、・・・・・・・ といッて早く食ッちゃァいかぬ。

(『新渡戸稲造論集』 岩波文庫)

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2011年2月19日土曜日

Is Bushido Still Alive ?


与党の衆院議員16名が会派離脱願を提出して、「やむにやまれぬ行動だ」と身内から評価されたそうです。

「やむにやまれぬ」なんて簡単に使って欲しくないですね。以下は、吉田松陰の辞世の歌です。ペリーの黒船に乗りこんでアメリカに密航しようとした松蔭が捕まって、下田から小伝馬町の牢屋敷に護送される時、通りかかった高輪の泉岳寺前で赤穂義士のことを思い出して詠んだということです。

かくすれば、かくなるものと知りながら
やむにやまれぬ大和魂

新渡戸稲造は、『武士道』の第十六章(Is Bushido Still Alive ?)で「武士道の将来はどうなるか」について書いているのですが、この松陰の歌を英語で説明しています。

Full well I knew this course must end in death;
It was Yamato spirit urged me on
To dare whatever betide.

日本の政治家先生に聞いてみたいです。

「Is Bushido Still Alive ?」

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2011年2月18日金曜日

国語は日本文化そのもの ~ 阿川弘之

新聞に掲載された阿川弘之さんのインタビューです。きちんとした日本語はいくつになっても難しいですが、きちんとした日本語がないと、外国語の習得なんて表面的なものに終わってしまうでしょう。

錨をおろして(下)作家・阿川弘之 産経新聞 2011.2.17 02:57

国語は日本文化そのもの

 --最近読んで面白く思われた本は

阿川 本じゃないが、「文芸春秋」昨年12月号の、小泉進次郎さんのインタビューが非常に面白かったね。何に感心したかって、日本語の勉強してるってとこ ろ。1年生議員だから政治的問題でいろいろ勉強すべきことはあるだろうに、日本語の勉強を優先させるってのはちょっと変わってるし、大変な見識だと思って ね。国語を大事にしようって政治家は、あんまりいないんじゃないかな

 --連載「葭(よし)の髄から」でも、言葉についてしばしばお書きです

阿川 国語というのは日本の文化そのものですからね。やはりきちんとした日本語を使ってもらいたい。特に家庭ではそうです。めちゃくちゃな言葉を親が使っていれば、子供はその影響を非常に大きく受けますからね。美しい日本語ってのは、美辞麗句、美文調でかしこまれってことじゃく、ユーモラスでも構わないんだ。ただ、たとえば今のテレビのお笑いタレントが使っているような、めちゃくちゃな言葉で子女の家庭教育をやるってのは好ましくありませんね

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2011年2月17日木曜日

中央線のヒト 太宰治

新宿南口

今日は、新宿でミーティングでした。

「新宿の秋田、ご存じでしょう! あそこでね、今夜、さいごのサーヴィスがあるそうです。まいりましょう。」 その前夜、東京に夜間の焼夷弾の大空襲があって、丸山君は、忠臣蔵の討入のような、ものものしい刺子(さしこ)の火事場装束で、私を誘いにやって来た。

太宰治の『酒の追憶』という短編小説です。太宰治の小説にはお酒が登場する作品がいっぱいあります。『酒の追憶』は、酒にまつわる思い出話です。暗いイメージがつきまとう太宰ですが、お酒が出てくる短編を読んでいると、芸達者な落語家が酔っぱらいを演じることに通じる味があります(三遊亭金馬の『試し酒』のように)。要するに、日本酒が飲みたくなるということです。

太宰治ほどJR中央線(太宰の時代ですから省線です)を書いた作家はいないでしょう。三鷹の下連雀(しもれんじゃく)に住んでいた太宰は、三鷹駅と吉祥寺駅の2つを使っていたようです。三鷹だけでなく、西荻、荻窪、阿佐ヶ谷、高円寺、中野が酒とともに多くの作品に登場します。元祖中央線のヒトだったんですね。

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2011年2月16日水曜日

(続々)The Soul of Japan

新渡戸稲造の『武士道』は、福沢諭吉の『学問のすすめ』と双璧をなす名著です。今の日本に最も必要なことが書かれています。

原文の英語は単語が難しいです。しかし、好きなセンテンスを一つ二つ丸暗記しておいて、アメリカ人との会話に何気なく使うと、相手は一目も二目も置くでしょう。岩波文庫に日本語訳がありますが、この日本語も難しい。でも、教養あふれる日本語です。両方を比べながら読むのがいいと思います。

『武士道』は十七章から成っています。一章は迫力ある導入部です。武士道を不言実行の不文律と位置づけています。二章は仏教やキリスト教と比較しながら武士道の起源を説明します。私のように宗教に無知な、ある意味典型的な日本人には難解です。しかし、新渡戸さんが主張したいこと、つまり、武士道は成文化されたものではないが、宗教心の稀薄な日本人にとって精神的な支柱みたいなものだということは理解できます。

三章から十一章は、必要な徳目(義、勇、仁、礼、誠、名誉、忠義、教育と訓練、克己)が書かれていて、それぞれが相互作用していると述べられています。この構成はすごい。章と章が論理的に結合されています。最後のほうは、武士道の将来はどうなるか等々です。
  • 三章 「」は最も厳格な教えで「勇気」を伴う決断の力(power of decision)。
  • 四章 「勇気」とは「義」のために実践されるのでなければ価値はない。 敢為堅忍の精神。
  • 五章 「(惻隠の情)」とは真のリーダーが持つべきものである。相手の気持ちを慮る。
  • 六章 「」とは謙譲・慇懃のこころである。慇懃だけど「礼」がないのは慇懃無礼。
  • 七章 「」がないのであれば、「礼」は猿芝居であり茶番となる。
  • 八章 武士の中心は「名誉」。恥の感覚である。無ければ破廉恥となる。
  • 九章 「名誉」と表裏一体のものが「忠義」である。日本人のロイヤリティ。

十章 武士の教育および訓練で、教師は「vocation(聖職者)」と書かれています。様々な徳目を修得するための教育フレームワークです。十一章 克己。ここでは日本人の気質について触れられていますが、列島の外で生活すると、涙がでるほど身につまされるポイントです。アメリカのロックバンド、エアロスミスに「Sweet Emotion」という曲がありますが、新渡戸さんは「Tender Emotion」という言葉を使い、「日本人は優しき情緒に対して世界で一番敏感な民族である」と言っています。

新渡戸さんは、なぜ『The Soul of Japan』を書物に書きあらわすことができたのでしょうか?

新渡戸さんは、奥さんがアメリカ人で本人はクリスチャンです。欧米の事情を熟知した上で、日本人を理解してもらうために『武士道』を英語で書いたのです。更に重要なポイントが2つあります。一つは、新渡戸さんは、江戸時代の生まれで武家の出身、維新を挟んで江戸と明治の両方を生きたことです。二つ目は、欧米で暮らし、台湾でも総督府の役人を務めたことです。様々な角度から物事の本質を考えたのだろうと思います。だから、100年経ってもぶれない内容の本が書けたのでしょう。

本当は、愛するアメリカ人の奥さんに日本人の素晴らしさを訴えたかったのかも知れませんが、、、。

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2011年2月15日火曜日

東京のちゃちな雪景色

武蔵野は雪の夜でした。

『雪の夜の話』は、太宰治が昭和19年の戦時下に「少女の友」に発表した少女小説です。中野の叔母さんのうちでスルメを二枚もらって、吉祥寺の駅に着いたら雪、、、。 JR中央線の話ですね。戦時中食べ物がなく、身重の兄嫁にスルメをもって帰ろうとしたのですが、家に歩いて帰る途中、雪に感動したあまり、スルメを落としてしまった女の子の物語です。雪の夜のファンタジーですね。

(前略)

「あたしはいま、とっても美しい雪景色をたくさんたくさん見て来たんだから。ね、あたしの眼を見て。きっと、雪のように肌の綺麗な赤ちゃんが生れてよ。」

「おい。」とその時、隣りの六畳間から兄さんが出て来て、「しゅん子(私の名前)のそんなつまらない眼を見るよりは、おれの眼を見たほうが百倍も効果があらあ。」
「なぜ? なぜ?」
 ぶってやりたいくらい兄さんを憎く思いました。
「兄さんの眼なんか見ていると、お嫂さんは、胸がわるくなるって言っていらしたわ。」

「そうでもなかろう。おれの眼は、二十年間きれいな雪景色を見て来た眼なんだ。おれは、はたちの頃まで山形にいたんだ。しゅん子なんて、物心地のつかないうちに、もう東京へ来て山形の見事な雪景色を知らないから、こんな東京のちゃちな雪景色を見て騒いでいやがる。おれの眼なんかは、もっと見事な雪景色を、百倍も千倍もいやになるくらいどっさり見て来ているんだからね、何と言ったって、しゅん子の眼よりは上等さ」。

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2011年2月14日月曜日

イチゴのデザート


夏目漱石の小説の中に、「氷に苺を入れるかレモンをいれるか」と尋ねる場面がありました。私は、メープルシロップソースでイチゴを火にかけてから、プレーンヨーグルトにのっけました。

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2011年2月13日日曜日

(続)The Soul of Japan

オリーブの氷柱

新渡戸稲造は『武士道』の中で、宗教心が稀薄でも日本人には「The Soul of Japan」、「The Yamato Spirit」があると説明しています。『武士道』には孔子や孟子、プラトンの言葉まで出てきますから、中学3年間の英語のテキストとしてはお薦めです。水戸のご老公様(水戸黄門)まで登場しますよ! 新渡戸稲造はクリスチャンです。敬虔なクリスチャンの視点から、宗教に代替する日本人の「やまとごころ」を語るのですから、説得力があります。

ムバラク大統領が辞任しましたね。中東の問題は、我々日本人には複雑すぎて難しいです。

ニューヨークに住むと、ジューイッシュ(ユダヤ)の習慣に多少なりとも接することになります。子育てや教育、そして勤勉さ。ジューイッシュと日本人は共通点が多いのです。アングロサクソン系(WASP)には嫌われるみたいで、ジューイッシュの「J」とジャパニーズの「J」をとって、日本人とジューイッシュが多く住む町は、「JJタウン」と揶揄されたりしました。JJタウンは公立学校区のレベルが高く、したがって不動産価格も高いのですが。

イスラムは寛容な宗教だったそうです。モスリムは、キリスト教徒やユダヤ教徒と共存していました。ところが、十字軍がエルサレムに入った時に、キリスト教徒はモスリムやユダヤ教徒を殺害しました。モスリムの世界は元々複雑だったので共存に慣れていました。しかし、キリスト教価値観が中心の西欧社会には慣れていなかったのです。イスラムの世界観では、「非モスリムは、将来的にはモスリムになる。そして、軍事的手段によるモスリムへの取り込みはジハードだ」と言われていました。

十字軍が非キリスト教徒を殺戮したのも、ジハードにより非イスラム教徒を強制的にイスラム教に転向させるのも、どちらも心の平静を尊ぶ日本人としては考えも及びません。

占領軍のリーダーであるマッカーサーは、日本で最初にぶち壊そうとしたのは「神道」だったそうです。「神道」への狂信的な宗教心が根底にあって、だから日本の軍隊は、神風特攻隊のようなことができたのだと考えていたようです。自分達の経験から、宗教に対する警戒心が強かったのでしょう。

少し横道にそれますが、先週、ロサンジェルスから昔の仕事仲間Rがやって来ました。久しぶりにランチを一緒にしたのですが、「マシュー・ペリーとダグラス・マッカーサーはどちらが傲慢で嫌な奴か」という話をしました。Rはペリー将軍に好意的でしたね。Rは若い頃にアメリカ海軍の将校として7年も駆逐艦に乗っていました。ペリーは海軍、マッカーサーは陸軍です。

閑話休題

日本人を見ていても、それから中国の若者や台湾のビジネスパーソンと話をしていても、ほとんど宗教は表に出てきません。やはり、東アジア社会には、「人間と神との契約」という観念が稀薄なのでしょうね。それが、ビジネスの世界にも影響しています。アメリカでは、家の売買契約にしても、売り手・買い手双方の弁護士が登場するし、契約書は恐ろしく分厚くできています(窓のカーテンが家と一緒に付いてくるかまで記述されるのですよ!)。

新渡戸稲造はクリスチャンですが、日本人の立場から、宗教心が稀薄な日本をフォローする意味で、「義」と「勇」を持ち出し、「The Soul of Japan」を説明しました。「義は、武士の掟中最も厳格なる教訓であった。武士にとりて卑劣なる行動、曲がりたる振舞いほど忌むべきものはない」(『武士道』 第三章 Rectitude or Justice)。

権力の座を守るために仲間を裏切ったり、リーダーの発言を「国民の声を代表するものだ」と国民に責任を転嫁する政治家たちは、「The Soul of Japan」をしっかりと勉強していただきたいですね。

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2011年2月11日金曜日

The Soul of Japan

新渡戸稲造

新渡戸稲造が明治33年に英文で出版した『武士道』の序文に以下の記述があります。

「ある時私はベルギーの法学者に『日本には宗教教育がない』と話したところ、『宗教なしで、どうやって道徳教育をするのか』と驚かれた。思い返すと、
自分に善悪の観念を吹き込んだのは武士道であることに気がついた」。

アメリカには多くのジューイッシュ(ユダヤ人)が住んでいます。特に、ニューヨークは約20%がジューイッシュで、公立学校ではジューイッシュの習慣(祝祭日)を尊重したスクールカレンダーになっています。宗教や民族を意識した中で子どもは育つわけです。

エジプト騒乱は、第5次中東戦争(ユダヤ人国家イスラエルと周辺アラブ国家との間での戦争)を引き起こさないか?これが世界の関心事ですが、日本にいる日本人からすると、ユダヤ教だイスラム教だといっても全くピンと来ませんね。新渡戸稲造は、「宗教心は全面的に出てこないが、日本には武士道がある。それは、大和魂(The Yamato Spirit)であり、日本民族の精神である」と主張しています。

もし、この精神的なバックボーンが次第にぼんやりと消えて行くならば、日本民族は何をもってアイデンティファイ(同一化)されるのでしょう?

日本人に宗教心がないという訳ではないのでしょうが、普段の生活では意識することはありません。ここらで、武士道の精神(The Soul of Japan)に立ち帰ってはどうでしょうか? 新渡戸さんの『武士道』は英語で書かれているので、中学校の3年間は英文『武士道』一冊だけを勉強すればいいと思います。暗記するくらい読み込めば、将来海外で仕事をする上で役に立つことは請合いです。「The feeling of distress(惻隠の情)~『武士道』 第五章」なんて言葉、アメリカ人との会話の中でさらっと使えたらカッコいいですよ。

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2011年2月10日木曜日

ヒーローの出現は?

明治のヒーロー ~ 伊藤博文 ~

子ども教育で始めたブログですが、最近どうも政治的な内容が多くなります。子どもの教育に関して考えると、つまるところ、日本を考えることになるからですね。「教育は国家百年の計」ですから。中国語では「十年樹木、百年樹人」と言います。「樹」は育てるという意味です。

私は、1995年には日本にいませんでしたが、今の日本は1995年頃に似ていると思います。世界情勢は進化しているわけですから、日本は1995年よりも確実に世界とのギャップが広がっているのでしょう(ギャップはあってももいいのですが、認識がないと困るという意味です)。

1995年の日本の出来事は以下の通りです。

阪神・淡路大震災http://ibg-kodomo.blogspot.com/2011/01/blog-post_17.html
近鉄 野茂英雄のドジャース入団
1ドル=79.75円
オウム真理教事件
第13回統一地方選挙(東京で青島幸夫が当選、大阪で横山ノックが当選)
石原慎太郎が衆議院議員辞職表明
村山首相、アジア諸国に植民地支配と侵略を謝罪
映画「アポロ13」封切り

青島さんは、都市博を中止した後、低姿勢に豹変しました。TVドラマ「意地悪ばあさん」のイメージはよかったのですが、人生の末節を汚しましたね。ノックさんも同じです。お笑いの世界だけに止まっておけばよかった。本人としても痛恨でしょう。

今回は、青島・ノック現象が国政レベルで起こったようなものです。日本は名実ともにかなり危険水域に入っていると思います。日本国民が自暴自棄になって政権交代が起こってしまったのならば、もう一度やり直せばいいのです。「リーダーにリーダシップがない」なんて言ってみても無駄です。そもそも今の日本にリーダーなんていないのですから。幻想ではなく現実を直視しましょう。

映画の世界だと、このあたりでカリスマ性を持ったヒーローが出てきます。さて、今の日本に豪放磊落なヒーローは出現するでしょうか?

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2011年2月9日水曜日

未来を予言する方法

水戸の梅まんじゅう

このニュースが真実であれば怖いですね。本当にディストピアになっちゃったんですかね?

北沢氏、自衛隊情報保全隊問題で虚偽答弁の疑い 衆院予算委
2011.2.9 01:00
自衛隊の情報保全隊が自衛隊OBの自民党国会議員らの講演を潜入監視していた問題で、北沢俊美防衛相が7日の衆院予算委員会で虚偽答弁をした疑いの強いことが8日、わかった(産経新聞)。

未来を予言する唯一の方法は、未来を形成する権力を手にすることだ。絶対権力を手にする者は、彼らの予言を実現することができるだけでなく、嘘をついて、その嘘を真実に転換することだってできるのだ。


The only way to predict the future is to have power to shape the future. Those in possession of absolute power can not only prophesy and make their prophecies come true, but they can also lie and make their lies come true.   ~ エリック・ホッファー 『情熱的な精神状態』より

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2011年2月8日火曜日

リーダーの視点

豊穣の里 ~ 御宿海岸

日本のニュースは何と言ったらいいか、、、。今更ですが、ニュースの優先順位がどこにあるのか理解に苦しみます。 エジプト騒乱に関するニュースより、大相撲のことやプロ野球の新人投手のことのほうが大きく取り上げられます。

欧米諸国が戦々恐々としているのは、「エジプトがイラン革命のようになるのではないか」ということです。 1979年2月のイラン革命は、冷戦の対立構造の中、親米でもなく親ソでもない、イスラムを原動力としたイラン民衆の革命でした。

アメリカ政府にとって、エジプトは難しい局面です。

アメリカは、エジプトがイランのようになって欲しくないことはもちろんのことですが、パキスタンのようにもなって欲しくない。パキスタンは、表面上は民主的な体制であっても、内実は軍部が裏で何をやっているのかが見えない状態だからです。

アラブ諸国はアメリカ政府の出方を見ています。アメリカ政府は、宗教を超えて民衆の味方になるのか、それとも、軍部と結託した新体制を構築しようとするのか。アメリカが後者を選択する様子を少しでも見せたとたん、エジプトの民衆はより過激に反応するでしょう。オバマさんは、宗教的な論争ではなく、ディストピアは民主主義に反するということで、民衆をまとめたいところでしょう。それとも弱体化したアメリカとしては距離をおくのか。中間選挙を睨みながらオバマさんも難しいところですね(オバマさんがこれを人気獲得の好機と捉えることも可能です)。

さて、わが国政府はどうでしょう?

我が国の総理は、昨年に引き続き、通常国会においても、ハクスリーの『すばらしい新世界(Brave New World)』を持ち出して、最少不幸社会の推進を声高に主張しているようです。

極端な管理社会、人権が抑圧された「ディストピア」を皮肉った小説を本当に読んだのでしょうかね? 私のような老百姓にとって、世界情勢なんて関係ないのかも知れません。 しかし、リーダーの視点が我々と大差ないのであれば、何だか恐ろしくなってきます。

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2011年2月5日土曜日

豊穣のアイデンティティー


外房の御宿(おんじゅく)にある「芸術清酒 岩瀬酒造」に行ってきました。

創業は享保8年(1723年)、昭和22年、全国鑑評会で首席を受賞、酒好きだった池田元首相の名指しの一品だったそうです。総茅葺き屋根の岩瀬家は、慶長14年(1609年)に御宿沖で遭難したメキシコ船「サンフランシスコ」号の帆柱を梁として使っています。

日本人のアイデンティティーを見たような気がしますね。
400年もの間一貫するアイデンティティーです。

良くても悪くても過去の歴史や伝統を否定した場合、日本や日本人としての連帯感ってどうなるのでしょう。 跡形もなく崩れ去っていくのではないでしょうか? ユダヤ教の言い伝えに、「舟を漕いで前に進むには、後ろに向かって、両岸を確認しながらでないと前に行けない」というのがあるそうです。

「岩の井」の豊穣なお酒を呑みながら、自分だけでもアイデンティティーが稀薄にならないようにしていきましょう、大吟醸古酒(上の写真の右)のように。酔っぱらいの戯言ですか?

御宿海岸
(画像をクリックしてみてください)

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2011年2月2日水曜日

開国か鎖国か?

アダム・スミス

「平成の開国」、「第三の開国」、「アジアの内需を日本の内需とする」、「若者は自信をもって世界に出て行くべきだ」、、、、。日本政府が声高に叫ぶスローガンですね。私は、どうもよく分かりません。

今の日本は、政権交代の熱狂的な精神状態から、日本の歴史始まって以来の不安定な精神状態にあるといえます。開国、開国と叫ぶよりも、一旦、緩やかでもいいから鎖国して、歴史を振り返り、何がこの日本という国をまとめてきたのかということを、政府国民で確認してはどうでしょうかね? このままだと、一国として独立もできず、アメリカの委任統治領にもなれず、中国の大和自治区にもなれず、みずから瓦解していくしかないのではないでしょうか?

アダム・スミスは著書の中で、守るべきものは国家であり、国家に支えられた生活の安定、心の平静であると提唱し、お金が全てと考える重商主義を批判しています。心の平静は「確実なもの」であり、土地(場所)に根ざした経済が一番大切である、つまり、国内における農業や製造業は貿易よりも優先すべきことだと言うのです。

「若者よ、自信をもって世界に出て行け」と言われても、日本のほうが世界のどこよりも居心地がいいから出て行きませんよ。政府が子ども手当の代わりに海外留学にインセンティブでもつけてはどうでしょうか?

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