2018年6月28日木曜日

テネシー州ナッシュビル紀行 8

40 トヨタ ランドクルーザー(1981) 当時アメリカで一番売れたトヨタの車。
希少価値はあるが、この車$35k rip off (ぼったくり)だと思う。

北米の日系企業は直近の10年南へ南へと拠点をシフトしてきています。実は、日系企業だけでなく、韓国や中国など他の外資系企業や欧州の自動車メーカーも南部に注目しているのです。生産拠点だけでなく本社を南部に移す動きもみられます。

なぜ南部なのでしょうか? 

労働コストが北部に比べて低いというメリットがあるのですが、単にそれだけではなく南部各州が優遇税制で積極的に企業を誘致し、街おこしに力を入れているのです(すでに紹介した「NashvilleNext計画 等」)。 

南部のメリット 
  • 現時点での労働コスト(中西部との比較)
  • 現時点での生活コスト(北部・西部との比較)
  • 交通の利便性(アトランタやダラスのハブ空港)
  • 気候(冬の寒波で全てがシャットダウンされることがない)
  • 不動産価格
  • 労務関連のリスク(ユニオンの組織率が低い)
  • 税金(所得税、法人税ゼロの地域が多い)
  • 人口増加の傾向
アメリカの良いところは多様性があり常に前向きなところです。これからの10年で全米各州の勢力バランスは大きく変わるでしょう。さて、日本の地方創生とやらはどうなるでしょうか?

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2018年6月27日水曜日

テネシー州ナッシュビル紀行 7

軍需品をあつかう店(ナッシュビル市街)
護身用の小さなピストルから軽機関銃まで売っています

ナッシュビルはバイブルベルト(Bible Belt)のバックル(Buckle of Bible Belt)と言われています。教会の数はコーヒーショップの数よりも多いそうです。アメリカ北東部のラストベルト(錆びついた工業地帯)と同様にトランプ大統領誕生に貢献した地域です。


バイブルベルトは、アメリカ合衆国の中西部から南東部にかけて複数の州にまたがって広がる地域で、プロテスタント、キリスト教根本主義、南部バプテスト連盟、福音派などが熱心に信仰され地域文化の一部となっている地域。 同様にキリスト教会への出席率の非常な高さも特徴になっている(ウィキペディア)。

アメリカやアメリカ人を本当に理解するには、アメリカの宗教を考えることです。多くの日本人が理解するアメリカとは違うアメリカが見えてくるのです。アメリカ人は負けが嫌いで、一番であることが当然と考える人たちです。実際ベトナム戦争まではそうでした。ところが、バイブルベルトの宗教に熱心な人たちにとって、自分達の生活が苦しい現状を説明できない。これはラストベルトの工場で真面目に働いてきたアメリカ人と同じフラストレーションなのです。ニューヨーク郊外の裕福なアメリカ人(多くはジューイッシュですが、、、)とは全く違うのです。

トランプさんは自分が一番になりたい、アメリカも一番じゃないと我慢ならない。それが自分の仕事だと思っているのでしょう。当然のことですが、日本にだけ親近感を持っているわけではない。全てがトランプ流「deal(取引)」の世界だと思います。冷戦終結から30年、アメリカが無条件に日本を保護する理由はなくなっているのです。

これからの日本を担う若者には一人でも多く本当のアメリカを理解してもらいたいですね。

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2018年6月26日火曜日

テネシー州ナッシュビル紀行 6

ナッシュビル パルテノン神殿

パルテノン(Parthenon)は、ナッシュビルに作られたアテネのパルテノン神殿の原寸大レプリカです。1897年、テネシー州制100周年記念万国博覧会のために建てられました。忌野清志郎、生前最後のアルバムはナッシュビル録音でした。レコーディングの様子をおさめた写真集にはパルテノン神殿で撮った清志郎の写真も掲載されています。

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シンギュラリティやAIが日本でも大いに議論されているようですが、私は大きな違和感を感じています。それは、知能(intelligence)と知性(intellect)をごちゃまぜにしていることです。人工知能は知能であり人間にできないことが可能です。それは、高速に大量のデータを処理することです。しかし、知性というのは人間のものです。反省とか振り返りとか、要するに、自己認識の範疇なのです。今回のトリップで驚いたことの一つは、アメリカでは哲学まで形式化数量化の学問にしようとしていることです。

アメリカの矛盾は自分たちはナンバーワンで永遠に不滅だと思っていることです。「More もっと!」と永遠に要求する「足るを知らない病」です。これはアメリカ特有の、金持ちが神に祝福されていてエライという考えです。端的にはトランプさんですね。シンギュラリティって、アメリカの金持ち層(エリート層)の発想にぴったしなのです。

新聞など日本のマスメディアやコメンテーターが表層的な理解だけでシンギュラリティやAIを取り上げているのは非常に滑稽です。ここでも手段と目的の取り違えが起こっているのかも知れません。

清志郎の人間性は全面的に数量化や形式化を受け入れるような単純なものではないのです。哲学や文化を定量化形式化してAIに委ねるなんて、アメリカの知識層にしかできない発想です。ナッシュビルの街おこし(NashvilleNext)でナッシュビルのアナログ文化を失って欲しくないですね。

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2018年6月25日月曜日

テネシー州ナッシュビル紀行 5

16年振りにナッシュビルを訪れ、そのダイナミックな発展を見て日本の地方創生とどう違うのか考えさせられました。

衰退する地方は大抵が極めて閉鎖的な社会です。外からの客観的な意見が必要なのですが、外部の智慧を受け入れようとはしません。高齢化社会が変化を頑なに拒否する傾向が強いことも影響しています。

20年程前4年間毎週のようにニューヨークからナッシュビルに通いました。当時、特に名産と言われるような美味しい食べ物は無かったように記憶しています。敢えていえばCatfish(なまず)料理くらいでした。ところが、今回驚いたことに美味しいものを食べさせるレストランが彼方此方にあるのです。ナッシュビル特産だとは思えないものばかりです。アメリカのどこでもある食べ物なのですが、ナッシュビルなのかテネシー固有の調理法や食べ方で個性をアピールしています。ただ単に食を売るのではなくナッシュビルをアピールするという街おこしの本質を理解しているかのようです。

Martin’s in Nashville


アメリカのBBQはそれぞれ地方のスタイルがあります。これは NashvilleスタイルののBBQ。お店で豚を丸焼きにしてBBQにします。行列のできるBBQレストランです。

The Redneck Taco

タコチップスの上にBBQポークとコールスローとハラペーニョがトッピングされています。ライムを絞って食べます。これは自宅でも真似ができます。ちなみに redneckって田舎者(白人)のことです。

Memphis Dry Rub Wings

チキンウィングにも地方ごとに自己主張があって、これはテネシー州メンフィス名物の Memphis Dry Rub Wingsです。

Hattie B's Hot Chicken














行列のできるナッシュビル名物ホットチキン Hattie B's Hot Chicken からのテイクアウトです。ナッシュビルの街おこしの重要なアイテムとなりつつあるようです。常にすごい行列です。ネットで注文してピックアップするのがお薦めです。

Chicago Style Gyros

ギリシャ料理でポピュラーな gyro 、N.Yや New Jersey ではジャイロといいますが、本当はギロ、ナッシュビルでもギロです。これがシカゴスタイルなのかは不明です。














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2018年6月24日日曜日

テネシー州ナッシュビル紀行 4


ナッシュビルネクスト(nashvilleNext)は、ナッシュビルが2040年に向けどのように発展していくかを示した計画です。市役所が中心となり2万人ほどの市民が参加して3年前に立案されたそうです。.

建設ラッシュのヴァンダービルト大学周辺

日本は東京オリンピック特需なのでしょうか? 都心では新しい高層ビルの建設ラッシュです。我が家の近くでもマンションやアパートがあちらこちらで建設中です。街全体の統合的な計画のない過剰なビル建設は、将来の減価償却費として大きな負担となるだけのような気がします。

ナッシュビルの場合、音楽を軸に国内外の観光客や音楽産業を取り込もうとしています。ナッシュビルには、ジャズ、カントリー、ブルーグラス、ロック、ポップ、クラシック音楽を楽しめる 130 以上のライブハウスがあります。また、国際会議や企業のコンベンションの誘致も視野に入っています。盲目的な固定資産の増加だけでなく、売上や利益を考えたコンテンツも総合的に考えられているように感じました。強いリーダーシップがあるのかも知れません。

ナッシュビルがラスベガスを追い抜くのはそう遠くない将来のような気がします。恐らく2040年を待つことはないでしょう。

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2018年6月23日土曜日

テネシー州ナッシュビル紀行 3

Music City
ナッシュビルのアイデンティティは音楽

都市が自らの歴史や伝統を否定した場合、その街の連帯感ってどうなるのでしょう? 外から流入してくるコスモポリタンに飲み込まれ、世界の大都市が辿る運命のように標準化されていくのでしょうね。

ナッシュビルには長年に渡り cultivate されてきた音楽の文化(culture)があります。ナッシュビルをナッシュビルたらしめているものは音楽であり、音楽を軸として発展していくことは揺るぎない信念なのです。だから情熱が生まれる。

「舟を漕いで前に進むには、後ろに向かって、両岸を確認しながらでないと前に行けない」というのはユダヤの教えです。ナッシュビルにはデジタルで表現できないアナログ音楽の伝統を忘れてもらいたくないものです。

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2018年6月22日金曜日

テネシー州ナッシュビル紀行 2

ナッシュビルの戦い
~ 南北戦争の北軍による最大の勝利の一つになった。
もし南軍が勝利していたら、、、、?

日本では、アメリカの南北戦争(American Civil War)は奴隷制の廃止の是非が戦いの原因であり、人道的道徳的な観点から勝利したリンカーンが最も偉大な大統領であると教えられます。しかし、リンカーンが偉大だとされる最大の理由は、アメリカが「アメリカ合衆国(United State of America)」と「アメリカ連合国(Confederated State of America)」の2カ国に分裂する危機があったのを防ぎ、一つの国として留めたことにあります。

南北戦争の最終戦の一つがナッシュビルの戦いでした。戦いから150年、これほどカリフォルニア州やニューヨークからコスモポリタンが流入したら再び南北戦争が勃発するか? 日本人の想像以上にアメリカの地域間のギャップは大きく、The Divided State of America なのです。

「もし南軍が勝利してたら、、、」って、もし西南戦争で西郷隆盛が勝利してたらと同じことかも知れませんね。
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2018年6月21日木曜日

テネシー州ナッシュビル紀行 1

街のあちらこちらに見かける「I BELIEVE IN NASHVILLE」
3つの星はテネシー州の州旗からのモチーフです

16年ぶりにテネシー州ナッシュビルに行ってきました。
何度かに分けて印象をレポートします。

ナッシュビルは16年たって驚くばかりに発展しました。正に昔日の感に堪えないと言ったところです。今も発展途上で、これからの10年でどこまで変化するか楽しみです。

カリフォルニア州から映画人やミュージシャン、音楽業界の連中が大挙してナッシュビルに移住しています。私の大好きなカリフォルニアのギタリストのロベン・フォードもナッシュビルに活動の拠点を移したようです。ニューヨークからはブルックリンの街並みの一部が最も斬新でカッコいい住人ごと移って来ています。

今後アメリカ南部の文化や習慣が、ロサンジェルスやニューヨークといった大都会のコスモポリタンとどうやって折り合いをつけるのか? 南部の田舎街ナッシュビルのゲマインシャフトは音楽という揺るぎない軸でアイデンティティを失うことなく今後も不動のものなのか? しばらくは目が離せない状況です。

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2018年6月5日火曜日

日本の民主主義は山の中か?

またやって来ました。梅干しの季節。

コンサルティング・ビジネスは情報収集やプロジェクトの準備・プロジェクト期間を通して議論するのが仕事です。議論を通して意見の統一をはかり、品質を高めていく。そのプロセスが民主的なのです。決して、決定事項に関して議論するのではない。

最近の様々な事件や報道を見ていて「民主主義」を考えてみました。

日本では自由で平和で豊かな暮らしができることが民主主義と考えます。

「民主主義においては、自由は非常に高価なもので、高価なんだけどそれでも価値があるという考え方が前提になっている。ところが、日本人にとっては自由も平和もみんなタダである」。これは昭和の時代にはよく言ったものですが、平成になって30年あまり、最近では聞かなくなりました。

日本人の多くの人は多数決が民主主義だと思っています。戦後民主主義教育の根っこの部分でしょうか? 教育って恐ろしいですね。

リーダーというのは意思決定するからリーダーであり、それがdemocracyの仕組み(民主主義)そのものであると言えるのですが、日本ではどうも疑わしい。民主主義の「手段」である多数決というのは、主張を一つにするメソドロジー(方法論)です。リーダーを決め、責任の所在を明らかにする。そして、リーダー主導の下で相手の主張を聞き、自分の主張をぶつけ、一つの結論に到達することを目指します。

日本の場合、相手の主張や組織を慮って意思決定の決定がいつまでも決定にならない。リーダー不在の合議制だから、決定したことに対して責任の所在が不明確になります。すなわち全員が責任をとらないということです。場合によっては全く論理的でない結果になることだってあるのです。

あのトランプさんは自由と平和と豊かさを求めてdecision making(意思決定)するのが民主主義だと思っているはずです。非常に好意的にとれば、自分の決定が議論を活性化させればいいと信じているかも知れません。そして、最後に決定することが自分の仕事だと思っています。たとえそれが正しくなくても、、、。

日本の国会や会社では、決定前の段階で民主的に議論をつくすのではなく、決定を集団でやろうとするから時間がかかり過ぎます。最後には従来通りの凡庸な結論しか出てこない。日本人は自由も平和も豊かさも高価なものであるという認識に欠けます。基本は他力本願で事なかれ主義なのです。これまでの70年数年はラッキーだった。でも、cherry picking、つまり、いいところ取りはもう通用しないのですよ。

今の日本ってもしかしたら、島崎藤村が描いた江戸末期の木曽の山奥とあまり変わりがないのかも知れません。

木曾路はすべて山の中である。

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