映画『アンストッパブル』(2010年)
https://www.bbc.com/news/articles/c4g311jn1m9o
BBC News
A Chinese firm bought an insurer for CIA agents - part of Beijing's trillion dollar spending spree
Celia Hatton
BBCの記事が示した中国の対外投資は、私には巨大国家の“暴走列車”のように見えます。行き先がどれほど危うくとも、速度を落とす気配はなく、ただ未来へ向かって突き進んでいく姿です。もちろん、その是非は別として、中国共産党は外へ向かい、資本も人材も政策も同じ方向に力を集中させています。
では日本はどうでしょうか。政治家は自国の未来よりも派閥均衡と地元の機嫌に気を取られ、国益より自身の次の選挙を優先します。国会では長期課題の議論より日替わりスキャンダルの追及が優先され、一歩先を見る視野を失っています。そもそも「政治家とは何か」という概念を理解していない人たちが、政治家を務めているようにすら見えます。
経済界は、中国依存の危険を語りながらも、その依存を断ち切れず、甘い関係を続けています。「リスク」より「既得利益の持続」が優先され、危険を理解しながら変化を拒んでいるからです。社長や役員までがサラリーマン化した結果と言えるでしょう。
教育界は、未来に必要な思考力を育むことよりも、均質化と失点回避の技法を教え続けています。若者は世界の変動を知らされず、社会全体が“未来を構想する力”を喪失しています。やはり、一般社会から最も遠いところにいる人たちが、国家百年の計のフロントラインに立っていることが問題なのでしょう。
国民もまた、思考を放棄しつつあるように見えます。政治や経済への不満を口にしながら、問題を自分の言葉で語ろうとはしません。「どうせ何も変わらない」という静かな諦念が、この国でもっとも共有された感情なのかもしれません。本当に賢い人たちは、いまの状況では表に出てきません。なぜならば、彼らは賢いからです。
そして何より深刻なのは、本来、権力を批判し監視するはずのメディアの劣化です。日本の大手メディアは、権力の顔色をうかがい、波風の立たない記事だけを量産しています。記者クラブ制度に守られながら「ジャーナリズム」を名乗っていますが、実態は広告代理店に近いと言わざるを得ません。調査報道は枯れ、権力監視の気概も消え、国民が知るべき情報は薄められ、丸められ、都合よく加工された形で提供されています。
こうして政治は方向を失い、経済界は依存を続け、教育界は停滞し、メディアは沈黙し、国民は諦める――。日本社会は、まるで全身の筋肉がふにゃりと力を失い、動くこと自体を忘れてしまったかのようです。
BBCが描いたのは中国の攻勢でした。しかし、本当に問うべき問題は中国そのものではありません。日本が未来に向けた「意志」も「想像力」も「怒り」も失いつつあることです。未来は自然には訪れません。動かない国家の上に、突然明るい未来が降ってくることもありません。
日本の衰退は、外からではなく内部から加速度的に進んでいるように見えます。日本本来の良さを忘れ、変化を願う声が小さくなっているのも気になります。今の日本の病状は、この無関心や諦めの広がりにあるのかもしれません。ですが、だからといって、虚無の克服に私たちにできることがないわけではありません。現状を認識し、自分の生き方や価値観を振り返り、少しずつでも考えをつなぎ直していくこと――それが、未来の日本につながる手立てになると思います。
高齢者の戯言と受け取るか、何かを感じていただけるかは、それぞれの方に委ねたいと思います。
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