2025年11月25日火曜日

「性格は環境で決まる」~ 人生を変えるのは“誰と出会うか”

 
東田島カトリック幼稚園(昭和30年代 福岡市)

ビジネス誌のオンライン版に、興味深い記事がありました。

「幼稚園の先生によって、将来の年収に1000ドル以上の差が生まれる」という、ペンシルバニア大学ウォートン校のアダム・グラント教授の研究を紹介したものです。

なるほど、幼少期の教育環境が人格や能力形成に大きく影響するという指摘はもっともです。しかし私が強く思うのは、そこで本当に問われているのは「先生という“個人”」ではなく、子どもを取り巻く“環境全体”の力ではないか、という点です。

もっとも、幼少期の環境は日米で大きな差があります。スペインの哲学者オルテガは「私は、私と環境でできている」と述べました。この言葉は、人格や性格の本質を端的に言い表していると感じます。

性格を育てる最大の要因は、家庭の“生き様”です

幼児に最も長く、強く影響を与えるのは、実は幼稚園の先生ではありません。間違いなく、親です。子どもは、親の言うことよりも、親の生き方・態度・振る舞いを見て育ちます。
  • 困難にどう向き合うか
  • 怒りや失敗にどう対処するか
  • 挑戦するのか、安全地帯に留まるのか
そうした日常の「背中」が、そのまま性格の設計図になります。

私たちを形づくる最大の力は、家庭という“環境”と、そこで起きる無数の“邂逅”(人やモノとの出会い)だと言えるでしょう。

才能(ギフト)よりも重要な「性格スキル」

大谷翔平選手のように、生まれながらのギフティッドであり、後天的に磨かれたタレンティッドでもある人は、例外的です。しかし多くの人は、天才ではありません。

では、私たち全員が持ち、後天的に伸ばせるものは何か。

それが、アダム・グラントがさまざまな研究で示している「性格に由来するスキル」です。

私はかつて、コンサルティング会社で多くの中途採用面接に関わりました。コンサルの採用は人事部の仕事ではなく、マネジメントが直接責任を持つのが原則です。

そこで最重要視したのは、知識でも経歴でもなく、性格でした。知識や経験は真偽の確認です。性格だけは“土台”です。ここが弱いと、どれだけスキルを積んでも、土台から崩れてしまうのです。

アダム・グラントが語る「性格スキル」の3要素

アダム・グラントは著作の中で、人の成長を左右する「性格由来の力」を整理しています。なかでも重要なのが以下の3つです。

1.意志力

不快から逃げず、小さな一歩を踏み出す力です。人は「変わりたい」と「変わりたくない」を同時に持っています。コンフォートゾーンから出る力は、人生を大きく分けます。

2.積極性(プロアクティブさ)

環境から学び、吸収し、適応していく力です。“人間スポンジ”のように新しい経験を取り入れ、不要なものを捨て、変化に柔軟に対応する姿勢が求められます。

ここで重要になるのが、良いメンターとの出会いです。出会いは、人を変える最大の装置だからです。

3.自己統制力(新渡戸稲造『武士道』の“克己”)

「できない完璧」ではなく、「できる現実」に基準を置き直す力です。完璧主義はしばしば挫折の原因になります。達成可能な基準を設定し、粘り強く進む力が、人生の持久力を生みます。

性格は“環境”がつくり、環境は“邂逅”で形づくられる

プレジデントの記事が示していたのは、幼児教育の力でした。しかし、より大きな本質はこうではないでしょうか。
  • 性格は才能を超える。
  • 性格は後天的に鍛えられる。
  • 性格を鍛えるのは、環境と邂逅である。
子どもをどんな環境に置くか。
どんな人やモノと出会わせるか。
何より、親である私たち自身がどんな生き方を見せるか。

幼稚園の先生は重要です。しかし人生を決めるのは、もっと大きな“環境の総量”です。そしてその環境は、私たち自身が選び、つくり出すことができます。

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