先日BBCが報じたニュースは衝撃的でした。米国で、ある少年が自ら命を絶ったことを受け、その両親が生成AIを提供する企業を訴えたというのです。背景には、AIとの会話が現実からの逃避や心の支えとなる一方で、孤立や依存を深める危険性があったのではないか、という懸念が浮かび上がっています。
日本の現状を振り返ると、この問題は決して対岸の火事ではありません。我が国の自殺者数は近年減少傾向にあるとはいえ、依然として年間2万人を超えており、先進国の中では独走状態です。さらに深刻なのは若年層の状況です。10~39歳における死因の第1位が自殺である国は、G7で日本だけ。10代の自殺率は横ばい、20代・30代は減少幅が小さく、 特に20代・30代の女性では、自殺者の約4割が自殺未遂歴を持っていました。突発的な飛び降りや飛び込みといった手段が目立つのも特徴です。つまり、若者の命は今もなお危うい均衡の上にあるのです。
こうした状況の中で、生成AIの普及は新たなリスクを孕んでいます。OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏自身がポッドキャストで「AIに心の闇をすべてさらけ出すのはやめたほうがいい」と警告しました。なぜなら、AIとの会話には医者や弁護士のような守秘義務がなく、場合によっては法廷で提出を強制される可能性があるからです。心のよりどころとしてAIに依存した人々が、その「秘密」を逆に脅かされるリスクがあるというのです。
そして、AI依存の危険なサイクルはすでに指摘されています。
そして、AI依存の危険なサイクルはすでに指摘されています。
- 現実逃避の手段として使い始める
- AIとの会話が心地よくなる
- 人間関係よりAIを優先するようになる
- 現実とバーチャルの境界が曖昧になる
- AIの言葉を絶対視するようになる
特に日本では、この危険性は一層深刻です。なぜなら、現行の教育制度が「自分の頭で考える」習慣を十分に育んでいないからです。答えの決まった問題を暗記し、試験を突破する力ばかりが求められる。総合的な学びの欠如、言葉を軽んじる風潮が、若者から思考の筋力を奪ってきました。そのまま大人になった人々が、AIという「便利なクスリ」に安易に手を伸ばす。これはまるで、街の薬屋で覚せい剤を自由に買える社会のようなものです。即効性はあっても、長期的には破滅へと導く危うさを孕んでいます。
我々が直面しているのは、「AIの是非」そのものではありません。問題は、思考停止に慣れきった社会でAIがどのように作用するかです。日本がこのまま「脳を使わない社会」を続けるなら、AIは救いではなく、静かに命を奪う毒薬となるでしょう。
自殺大国ニッポンに必要なのは、AIに依存しないで生き抜くための「思考力」と「対話力」を社会全体で取り戻すことです。でなければ、次にBBCが報じるのは、我々自身の悲劇かもしれません。
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