2026年1月1日木曜日

人生最大のピンチは、だいたい夜明け前にやってくる

 

大晦日の早朝――正確には、12月31日の午前3時ごろのことでした。
世間では、大晦日ということで慌ただしい一日が待ち構えている。

私はすでに起きていました。
年寄りの朝は早い。というか、これが私の日常であり、ゴールデンタイムでもあります。

その時間、なぜか無性に中華粥が食べたくなりました。

炊飯器にはすでにセットしてあり、スイッチを入れるだけ。
あとは炊き上がりを待つだけです。

やがて炊きあがる音がして、いい匂いが立ちのぼってきました。
パクチー、ネギ、ドライオニオンを並べ、器はどれにするかなぁ、、、。
「さて、食べるか」と思った、その瞬間――
炊飯器の蓋が、開きません。

フックボタンを押しても、微動だにしません。
何度押しても、反応なしです。

中華粥の香りだけが、やけに元気に主張してきます。
いい匂いはする。
しかし、開かない。

これは焦ります。
大変です。
もしかしたら、人生最大のピンチかもしれません。

仕方なくネットで調べ、
パナソニックの「24時間チャット対応トラブル窓口」にアクセスしました。
深夜でも対応してくれるらしい。文明は進みました。

ところが、10回ほどやり取りして分かりました。
相手は、どう考えてもロボットです。

こちらが

「蓋が開かない」
「中華粥が食べられない」
と必死に訴えているのに、ロボットさんは冷静に、

「専門のテックにつなぎます。次の画面でお申し込みください」

と言います。

中華粥は好きか聞いても答えません。

しかも、

「通常500円のところを198円にディスカウント」
などと、いかにも親切そうな提案までしてきます。

もちろん、申し込みません。詐欺の可能性だってあります。
年寄りといっても、人生経験豊かな高齢者は簡単には騙されません。

そうこうしているうちに、50分ほど経ちました。
すると――

中が冷めたのか、再びフックボタンを押すと、あっさり開きました。

……あれほどの騒ぎは、何だったのでしょうか。

こうして私は、無事に中華粥にありつくことができました。
もう夜明けが迫っています。

パクチーも、ネギも、ドライオニオンも、すべてが報われました。

教訓はいくつかあります。

一つ、人生のピンチは、だいたい午前1時に起こります。
二つ、深夜のチャット窓口は、だいたいロボットです。
三つ、多くの問題は、少し時間が経てば勝手に解決します。

大晦日の夜明け頃、
私は湯気の立つ中華粥をすすりながら、
「まあ、今年もこんな感じか」
と、一人で納得しました。

新しい年も、きっと
大げさな騒ぎと、小さな結末の繰り返しなのでしょう。

***

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