Scent of a Woman (1992)
学問のすすめ 12編の後半は、「人の品行は高尚ならざるべからざるの論」です。「ならざるべからざる」なんて難しいですね。これは、漢文では不可不~の二重否定です。つまり、「高尚でないといけない」と言っています。
福沢さんは、幕末に勝海舟とアメリカに行ったり、明治維新直後に単独で欧米に行った訳ですが、ずっと若い頃は立派な漢学者でした。お父様に鍛えられた漢文の知識は豊富なのです。福沢さんという人は、日本語、中国語、そして英語などの外国語を全てマスターした上で、様々な提言を日本や日本人に対して行っていた訳です。すごいですねぇ。
さて、「人の品行は高尚ならざるべからざるの論」ですが、これは、まさしくインテグリティ(integrity)のことを言っているのだろうと思います。インテグリティは日本語に翻訳しにくい。「志」という人もいれば、「誠実」と訳す人もいる。しかし、どうもしっくりこない。
私は、「倫理観」と「スキル」と「野心」の3つのバランスがとれていることがインテグリティであると長いこと信じていました。しかし、福沢さんに「人の見識を高尚にしてその品行を提起するの法如何すべきや。その要訣は事物の有様を比較して上流に向かい、自ら満足することなきの一事に在り」と言われると、これがインテグリティかとも思います。
アメリカ人は、インテグリティをどうとらえているでしょうか?
アル・パチーノ主演の「セント オブ ウーマン」という映画があります。アル・パチーノがアカデミー賞主演男優賞をとった映画です。映画のクライマックスで、アル・パチーノ演ずる盲目の退役軍人が、学校(ボーディングスクール:有名大学に入るための全寮制の高校)の公聴会で演説します。そこで、「INTEGRITY」が出てきます。
リーダーシップを養成するためのボーディングスクールを舞台にしたヒューマンドラマは、インテグリティが一つのテーマになっています。映画のサブタイトルでインテグリティは「高潔さ」と訳されています。映画のストーリーは説明はしませんので、是非ご覧下さい。インテグリティが理解できると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=gOcBWheLcm4
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私は、インテグリティを「倫理的に誠実であること」だと理解しています。「高尚」は、ニュアンスがちょっと違う気がします。日本の子供達にインテグリティを教えたり求めるのは難しい。露顕する迄、隠し通し、どうにもならなくなったら轡を並べてカメラの放列の前で横目配せに頭を下げて幕引きをする「偉い方々」をしょっちゅう見てる訳ですから。「アンタ(おとな)には、言われたくない。」という気持ちで一杯でしょう。きっと。
返信削除もちろん自分のことは棚に上げての話ですが、、、
返信削除今の日本にはロールモデル(手本)が少ない。子供にとっても若いビジネスパーソンにとっても40代の中間管理職にとっても。学校の先生もロールモデルとしての高潔さ(インテグリティ)や自己認識に欠ける人が多いような気がします。
昔は町内会にも「あそこのオニイチャンは立派だね」と言われるようなヒーローがいたような、、、。