2009年12月20日日曜日

動物農場(アニマル・ファーム)

今日はジョージ・オーウェルの「動物農場」を紹介しましょう。

物語は、豚のメージャーが動物たち自身による自主独立の理想的な農場のビジョンを語ることから始まります。メージャーの死後,残された動物たちが反乱を起こして人間たちを追放し、理想の「動物農場」が誕生したかに思われました。

このとき、リーダーシップをとったのが,繁殖用の豚のスノーボールとナポレオンです。さらにこれに従うのが、それ以外の食肉用の豚とメスの豚たち。彼らは,全動物たちのうちで、一番知能がすぐれていることになっていて、それ以外の馬、牛、鶏、羊たちは,その経験や知識の足りなさから、結局、豚たちの一方的な指導に従わざるをえないのです。

その後、人間たちが農場奪回にやって来ます。しかし、スノーボールたちの作戦が成功して、人間たちを撃退します。こうして、動物たちは革命の勝利の喜びにわき、自分たちの農場の誕生を祝います。

やがて、スノーボールとナポレオンの権力闘争が始まったのです。犬たちを軍隊に仕立てたナポレオンによって、スノーボールは追放されてしまいます。これまでにも、豚たちの特権階級化の様相が見えはじめていたのですが、これをきっかけに、事態はますますナポレオン独裁体制に向かって進んでいくのです。

この動きにもっとも貢献したのがスクゥイーラーという名の宣伝係でした。言葉巧みに、一般の動物たちを操る彼の手腕により、他の動物たちはナポレオンの意向にしたがわざるをえません。

ボクサーという勤勉で忠実な馬は、革命のために献身的な努力をしてきたのですが、この事情を飲み込めず、「ぼくはもっと働くぞ、ナポレオンは正しいぞ」というモットーのもとに、ただただ働きつづけ、悲惨な最期を遂げて死んでしまいます。

動物たちが自分たちのために作った「七戒」という憲法のような法律も、豚の手によって都合良く書きかえられ、理想の「動物農場」は以前の「荘園農場」にも増した豚一群の独裁的な農場に変わったところで物語はおしまいです。
 
つまり、この小説は「全体主義」がどのように誕生するか、そのプロセスを明確に教えてくれています。

ボクサーと言う馬のアプローチはいつも同じです。それは「もっと頑張って働くよ」です。ボクサーの素直な勤勉さは、みんなが現実を冷静に判断することを阻害します。しかし、実は彼が働けば働くほどみんなの仕事が増えるのです。農場を経営する豚たちは、実は、自らの利益のためだけにボクサーを操っていた。ボクサーの勤勉さは、豚たちの意図を隠し、豚たちのねらいを他の動物から見えにくくする働きをしたのです。

去年の年末は日比谷のテント村が話題になっていました。ニューヨークから見ていて非常に奇異に感じていました。「蟹工船」も流行っているとのことでした。映画にもなったとか。

日本の若者には「蟹工船」ではなく、ジョージ・オーウェルの「動物農場」や「1984」を読んで欲しいと思います。「動物農場」は短編なので、小学生にもお勧めの一冊です。

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