2011年7月8日金曜日

一株の紫陽花


紫陽花は多くの作家が作品に書いています。 古くは万葉集にも出てきます。 太宰治の『雀』にも紫陽花が効果的に使われています。

太宰治 『雀』 (1946年)

あれはもう初夏の頃で、そろそろれいの中小都市爆撃がはじまって、熱海伊東の温泉地帯もほどなく焼き払われるだろうということになり、荷物の疎開やら老幼者の避難やらで悲しい活気を呈していた。

その頃の事だが、る日、昼飯後の休憩時間に、僕は療養所の門のところに立ってぼんやり往来を眺めていた。日でり雨というのか、お天気がよいのに、こまかく金色に光る雨が時々ぱらぱらと降って来るが、道路に腹がすれすれになるくらいに低く飛んで飛び去る。

僕はあの時、何を考えていたのだろう。道の向う側の黒い板塀の下に一株の紫陽花が咲いていて、その花がいまでもはっきり頭に残っているところから考えると、いは僕はそのとき柄にもなく旅愁に似たセンチメンタルな気持でいたのかも知れないね。

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2 件のコメント:

  1. 緑と紫。変化とコントラストが綺麗です。

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  2. 有難うございます。でも、ちょっとコントラストが強すぎたと思っていました。写真も難しいです。

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