2011年5月24日火曜日

「人を動かす」には


下校風景

カーネギーの「人を動かす」(創元社)は、社会人になったころに上司に薦められて読む本です。私もご多分に漏れず若い頃に読みました。カーネギーさんは人を励ますことをいっぱい書いています。良い本だと思います。

「人間は自尊心のかたまりです。人間は、他人から言われたことは従いたくないが、自分で思いついたことには喜んで従います。だから、人を動かすには命令してはいけません。自分で思いつかせればよいのです」(本文より)。

ただ、30年以上たって読んで見て、少しばかり違った感想を持ちました。「人を動かす」は、人間関係のノウハウを記したものですが、アメリカで義務教育を受けた人を前提に置いているのでしょう。人間の本質に関する原則なので、時代背景や人種によって差は出て来ないはずなのですが、そうとも言い切れない部分があります。

以前も書きましたが、アメリカの義務教育は自尊心を育むことにあります。自尊心がないとジャングルのような厳しい社会で生き残れないからです。全ての人が優秀でもないし、いつでも成功するわけではない。最後に自分を信じることができないと生きてはいけません。だから、自尊心(self-esteem)が重要になってくるのです。恐らく、カーネギーのメッセージは、self-esteemが確立している若者を前提として、人間関係のノウハウを語っているのだろうと思います。

今の日本では、自尊心が強すぎる弊害を前提としたカーネギーよりも、明治初期に福沢諭吉が啓蒙しようとしたことのほうがピタッとくるような気がします。

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