2010年10月21日木曜日

葉隠 ~ 武士のコーチング

最近、コーチングとかカウンセリングとか流行っているのでしょうかね?よく耳にします。メンタリングも同様に、それぞれが意味するところは曖昧です。正確な定義などないのでしょう。他人に意見をするのは難しいことです。私なんか10年ほど前までは何の迷いもなく、「コーチングとはこうだ」、「カウンセリングとはああだ」と臆面もなく言っていましたね。今考えると赤面ものです(私の人生は赤面ものが多すぎる、、、、)。

人に意見するのは本当に難しいことです。他人の長所や短所を見付けるのは簡単です。普通、短所を見付けることは長所を見付けるよりも簡単です。何でも批判することは簡単ですが、相手に理解してもらい、改善してもらうことは難しい。以下は、重要なポイントです。

① 相手の性格を見きわめる
② 相手との距離を考える
③ 言い方やタイミングを選ぶ
④ 相手に気づかせるように話す

これは、アメリカのコーチングやカウンセリングのメソッドを拝借して言っているのではありません。「葉隠」の中にあるのです。

「人に意見をして疵(きず)を直すと云ふは大切なる事にして、然(しか)も大慈悲にして、ご奉公の第一にして候。意見の仕様、大いに骨を折ることなり。およそ人の上の善悪を見出すことは易き事なり。それを意見するもまた易き事なり。大かたは、人の好かぬ云ひにくき事を云ふが親切のやうに思ひ、それを請けねば、力に及ばざる事と云ふなり。何の益(やく)にも立たず。ただ徒(いたずら)に、人に恥をかかせ、悪口すると同じ事なり」。(後略)

さて、三島由紀夫は「葉隠入門」でどう言っているのでしょう?

男の世界は思いやりの世界である。男の社会的な能力とは思いやりの能力である。武士道の世界は、一見荒々しい世界のように見えながら、現代よりももっと緻密な人間同士の思いやりのうえに、精密に運営されていた。常朝(「葉隠」の著者である山本常朝)は人に意見をするにも、次のような配慮と、次のようなデリカシーをつぶさに説いている.。(中略) 彼が人に忠告を与えることについての、この心こまかな配慮をよく見るがよい。そこには、人間心理についての辛辣なリアルな観察の裏づけがあるのであって、常朝はけっして楽天的な説教好き(人間的にもっとも無知な人びと)の一人ではなかった。

三島由紀夫は、「デリカシー」という言葉を使っています。このあたりが三島らしいところですね。私も楽天的な説教好きの一人にならないようにしなければ(遅きに失する?)。失礼しました。

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2 件のコメント:

  1. 他人に意見するのは確かに難しい事だと思います。
    人に本を薦めるのも相手が欲してる時に、関心を持つように薦めないと、本の価値を損なってしまうと思います。何かのきっかけで、本との距離が縮まったときにその本を読むのが良い読み方だと思います。

    ブログで紹介されている本は、いずれも今まで読んだ事が無かったので、追いかけて読んでいます。エッセンスを解説いただいているおかげで本との距離が近く読み始められます。特にディストピア小説(1984年、動物農場、すばらしい新世界)は、このブログを読んでいなかったら途中で挫折していたと思います。

    今後も本を紹介していただけるのを楽しみにしています。

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  2. コメント、有り難うございます。本の押し売りはしたくないのですが、、、。適当に取捨選択してください。

    新しい本はもうほとんど読まないですね、読んだことのある本を何度も読みます。昔は内容を理解していなかったことが、よ~く分かります。これも赤面ものです。

    ***

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