2010年10月14日木曜日

(続)落語のすすめ

臨時国会が始まりました。最近は政治家の声を聞くだけで鬱陶しく不機嫌になってしまいます。水戸のご老公に喝(カツ)を入れて欲しいくらいです。

ですので、落語の話をします。

桂米朝さんという上方落語界の重鎮がいらっしゃいます。人間国宝に認定されている方です。1925年生まれなので85歳です。米朝さんの凄さは、江戸落語と上方落語の「境界」をうまくマネージした点だと思います。米朝さんは、落語だけでなく、異文化・異芸能コミュニケーションを長年に渡って研究されてきました。米朝さんは、中国東北部大連で生まれ、兵庫県で育ち、東京の大学に行きました。若い時に関西とは違った文化圏とのつながりも出来ているのですね。東京根岸生まれの小沢昭一さんとの俳句を通じた交流も長年に渡っているそうです。

米朝さんの弟子に桂枝雀さんがいます。枝雀さんが亡くなってから(自殺)11年になります。枝雀さんは、米朝落語を踏襲しながらも独自の分野を築きました。米朝さんというスーパースターを完全に理解することを起点として自分の世界を創造していった人です。枝雀さんは落語に出てくる登場人物に標準語を喋らせます。関西人である枝雀さんが、標準語を無理矢理しゃやべる可笑しさを意識しているのです。また、英語落語にも挑戦していました。恐らく、枝雀さんの英語力はかなりの水準だと思います。東西融合や日米(日本語と英語)の「境界」を意識しながら自分の世界を構築したのですね。

枝雀さんの凄いところは、これだけでなく落語にフレームワーク(枠組み)をセットしたことです。枝雀さんの言う「緊張の緩和理論」です。これは、私の理解によると、緊張と緩和の「境界」をマネージすることです。枝雀さんは、「適度の緊張が続き、それがある時点で緩和されるところに笑いが起る」と定義しています。緊張が過度、又は、長時間すぎると笑えません。「人はなぜ笑うのか?」を分析し、緊張と緩和をパターンに分けて落語の噺にフレームワークを与えたのが枝雀さんです。コンサルタントみたいですね。自分自身が創作する新作落語は、フレームワークを意識して新しい噺をデザインしました。枝雀さんの新作落語では更に枝雀さん独特のシュールな魅力にあふれています。

さて、本日のウダウダです。

最近、「Diversity(多様性)」という言葉をあちらこちらで見ます。多様性は大事な事で、日本の社会、特にビジネス界が必要とするものだと思います。Diversityと言うのは、様々な物事の境界をうまくマネージしてダイナミズムを生むということです。ただ単に異なる性質のものを一緒くたにすると言うことではありません。一緒くたにすることによって矛盾がうまれ、それを解決することによって進歩が見られるということです。毛沢東も同じようなことを言っていますね(「矛盾論」1937年)。でも今の中国の矛盾(政治体制と市場経済の矛盾)は解決できないと思いますよ。

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