今年も百日紅が咲いています。 去年よりも色が濃いように感じますが、拙宅の百日紅は、街で見かける百日紅よりもまだ色が薄いようです。http://ibg-kodomo.blogspot.com/2010/07/blog-post_30.html
絵にならない花ですが、文学の世界にはよく登場します。 太宰の三鷹下連雀の自宅の百日紅は、本当に咲かなかったのですかね? たぶん、咲いたのでしょうね。
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一刻も早く、家から出て行きたい様子でしたが、炎天つづきの東京にめずらしくその日、俄雨があり、夫は、リュックを背負い靴をはいて、玄関の式台に腰をおろし、とてもいらいらしているように顔をしかめながら、雨のやむのを待ち、ふいと一言、
「さるすべりは、これは、一年置きに咲くものかしら」 と呟きました。
玄関の前の百日紅は、ことしは花が咲きませんでした。
「そうなんでしょうね」 私もぼんやり答えました。
それが、夫と交した最後の夫婦らしい親しい会話でございました。
(『おさん』太宰治)
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一刻も早く、家から出て行きたい様子でしたが、炎天つづきの東京にめずらしくその日、俄雨があり、夫は、リュックを背負い靴をはいて、玄関の式台に腰をおろし、とてもいらいらしているように顔をしかめながら、雨のやむのを待ち、ふいと一言、
「さるすべりは、これは、一年置きに咲くものかしら」 と呟きました。
玄関の前の百日紅は、ことしは花が咲きませんでした。
「そうなんでしょうね」 私もぼんやり答えました。
それが、夫と交した最後の夫婦らしい親しい会話でございました。
(『おさん』太宰治)
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