2011年11月12日土曜日

太宰治 ~ 三鷹陸橋

昭和4年に設置された三鷹陸橋

三鷹陸橋 太宰ゆかりの案内板

太宰治は、世間にダメな人間だと思わせて死にたかったのでしょう。 自分の人生を小説としてプロデュースしたかったのかも知れません。 草場の陰でニヤッとしているのでしょうね、たぶん。

太宰治 『人間失格』

自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。自分は東北の田舎に生れましたので、汽車をはじめて見たのは、よほど大きくなってからでした。自分は停車場のブリッジを、上って、降りて、そうしてそれが線路をまたぎ越えるために造られたものだという事には全然気づかず、ただそれは停車場の構内を外国の遊戯場みたいに、複雑に楽しく、ハイカラにするためにのみ、設備せられてあるものだとばかり思っていました。しかも、かなり永い間そう思っていたのです。ブリッジの上ったり降りたりは、自分にはむしろ、ずいぶん垢抜(あかぬ)けのした遊戯で、それは鉄道のサーヴィスの中でも、最も気のきいたサーヴィスの一つだと思っていたのですが、のちにそれはただ旅客が線路をまたぎ越えるための頗る実利的な階段に過ぎないのを発見して、にわかに興が覚めました。


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