2011年11月2日水曜日

漱石から大学生へのアドバイス

東京国立博物館のモザイク壁

「法然上人は、豆腐が好きだった。親鸞聖人はあずきが好きだった」。

私は豆腐もあずきも大好きです! 上野の国立博物館の特別展「法然と親鸞」を見てきました。 日本の宗教改革を行った2人ということで、詳しく知りたかったのですが、あまりにも人が多くてよく分りませんでした。

夏目漱石は『模倣と独立』の中で親鸞に言及しています。 『模倣と独立』はインデペンデントの重要性を学生たちに説明した漱石の大正時代の講演です。 下に引用しますが、青空文庫から無料でダウンロードできますので是非全文を読んで見て下さい。

「親鸞上人に初めから非常な思想があり、非常な力があり、非常な強い根柢のある思想を持たなければ、あれほどの大改革は出来ない。言葉を換えて言えば親鸞は非常なインデペンデントの人といわなければならぬ。あれだけのことをするには初めからチャンとした、シッカリした根柢がある。そうして自分の執るべき道はそうでなければならぬ、外の坊主と歩調を共にしたいけれども、如何せん独り身の僕は唯女房を持ちたい肉食をしたいという、そんな意味ではない。その時分に、今でもそうだけれども、思い切って妻帯し肉食をするということを公言するのみならず、断行して御覧なさい。どの位迫害を受けるか分らない。尤も迫害などを恐れるようではそんな事は出来ないでしょう。そんな小さい事を心配するようでは、こんな事は仕切れないでしょう。其所その人の自信なり、確乎たる精神なりがある。その人を支配する権威があって初めてああいうことが出来るのである。だから親鸞上人は、一方じゃ人間全体の代表者かも知らんが、一方では著しき自己の代表者である」。

漱石から大学生へのアドバイスです。

「あなた方も大学を御遣(おや)りになって、そうして益(ますます)インデペンデントに御遣りになって、新しい方の、本当の新しい人にならなければ不可(いけ)ない。 蒸返しの新しいものではない。そういうものではいけない。要するにどっちの方が大切であろうかというと、両方が大切である、どっちも大切である。 人間には裏と表がある。私は私をここに現わしていると同時に人間を現わしている。 それが人間である。 両面を持っていなければ私は人間とはいわれないと思う。 唯どっちが今重いかというと、人と一緒になって人の後に喰っ付いて行く人よりも、自分から何かしたい、こういう方が今の日本の状況から言えば大切であろうと思うのであります。 文展(文部省美術展覧会)を見てもどうもそっちの方が欠乏しているように見えるので、特にそういう点に重きを置いて、御参考のために申し上げたような次第であります」。


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