夏目漱石の「私の個人主義」は、ジミー・ヘンドリックスの「Little Wing」やクリーム時代のエリック・クラプトンの「Sunshine Of Your Love」と同様に私の人生を変えた作品です。 漱石をジミヘンやクラプトンと同次元で並べると、漱石には失礼ですよね。
私が、漱石を読んだのは中学時代後半ですが、ちょうどこの頃、「イージーライダー」、「俺たちに明日はない」、「真夜中のカウボーイ」や「カッコーの巣の上で」といったアメリカン・ニューシネマにものめり込んでいました。
夏目漱石は、「私の個人主義」の中で以下のように言っています。
『私はそれから文芸に対する自己の立脚地を堅めるため、堅めるというより新らしく建設するために、文芸とは全く縁のない書物を読み始めました。 一口でいうと、自己本位という四字をようやく考えて、その自己本位を立証するために、科学的な研究やら哲学的の思索に耽(ふけ)り出したのであります』。
『私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。彼ら何者ぞやと気慨が出ました。今まで茫然と自失していた私に、ここに立って、この道からこう行かなければならないと指図をしてくれたものは実にこの自己本位の四字なのであります。自白すれば私はその四字から新たに出立したのであります。そうして今のようにただ人の尻馬にばかり乗って空騒ぎをしているようでははなはだ心元ない事だから、そう西洋人ぶらないでも好いという動かすべからざる理由を立派に彼らの前に投げ出してみたら、自分もさぞ愉快だろう、人もさぞ喜ぶだろうと思って、著書その他の手段によって、それを成就するのを私の生涯の事業としようと考えたのです』。
漱石は傷心のイギリス留学で色んなことに気付いたのですね。漱石が「自己本位」と言っているのは、アメリカの学校教育の根幹である「自尊心」であり、福沢諭吉の言葉であれば、人(万物の霊)の「本心」だろうと思います(福沢諭吉の「本心」についてはまた書こうと思います)。
日本では、自己実現という言葉をよく耳にします。私は、この自己実現の意味するところがよく分かりません。自己を実現するとはどういうことだろうかと悩んでしまいます。
漱石が自己本位と言っているのは、自分勝手と言うことではなくて、自信をもつ、自分の軸を見つける、自分の見識・判断力を養うと言ったことだろうと思います。今の日本の子供に必要なことであり、大人の世界に欠如しているものは、自己実現と言うより、漱石の言う自己本位であり、漱石が「私の個人主義」で言うところの「個人主義」ではないでしょうか?
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新型コロナ隔離日記 ⑮隔離生活のまとめと手引き
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【お願い】
以下は2020年5月30
日に成田空港より日本へ入国、隔離された経験を記しております。入国のタイミングや場所によって、当局の対応や種々の状況は変わってくることもあるかと思います。この点を予めご承知おきの上、本日記をご高読賜りますようお願い申し上げます。
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(2020年6月22日(月)投稿「...
4 年前
私も、自己実現と言う言葉は良く理解できないので、自分では使いません。最近は、「自分探し」とか「自分への褒美」など、変な言葉も見ます。自分の知らない凄い自分が別にいるような期待をしているのでしょう。無責任さと甘さが漂う言葉です。目標は自分の意志と戦略で実現する、が私の持論ですので、あの手の言葉の氾濫に違和感を感じています。
返信削除全く同感ですね。先日のHRDのイベントで、「仕事を通じて自己実現することをコーチします」という宣伝文句を見ました。「理想の自分を探す旅」でも想定しているのかとも思いましたが、そもそも、実現したい理想の自己とは何なのか、明確なものがあるのでしょうか?
返信削除漱石は留学先のイギリスで悩みに悩み、鬱になって傷心の帰国をしますが、自分の本質というか、つまり、「自己本位」ということを見つけた。だから、その後、後世に残る小説が生まれたのだと思います。
私が言うのもお恥ずかしいですが、今の日本の若いビジネスパーソンには、悩むことやストレスとなることを回避することで自分を守ろうとする人が多いように感じます。誰かに何かを言われると、「そういったことを言われると傷つきます。私は私なりに一生懸命やっているんです!」と開き直る。
いつのまにか日本は大きく変わったようです。
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日本は、世界一安全で恵まれた国になり、国民はマクロなストレスの最も少ない環境で暮らしています。その環境が人をスポイルしてしまっているのかもしれませんね。私が日本に住んでいた頃から想像も出来ない数の人が、鬱病だと聞いています。サボり癖も産業医が鬱病に仕立て上げていると話してくれた人がいました。甘やかしが横行しているのではないかと懸念しています。
返信削除アメリカのすみこです。
返信削除多様な人間の集まるコミュニティーの中にいます。個人が確立しているからかな?相手を批判せずにうまくやっています。フレンドリーで人々が助け合う、とても良い地域です。
三鷹の師匠(勝手につけちゃいました)のブログ本当に勉強になります。
ところで、クラプトンもジミヘンも天才です。音楽も一つの知性ですから。
お師匠さんではありませんが、恐縮です。私の中では、ジミヘン>クラプトンであり、福沢諭吉>夏目漱石です。みなさん凄い人たちですが、、、。
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