2010年4月1日木曜日

今朝の井の頭公園 ~ 「武士道」と桜の花 

早朝、カメラ片手に井の頭公園を散歩してきました。桜の花は、咲き始めといったところでしょうか。

桜の花と言えば、在原業平の「世の中に たえて櫻の なかりせば 春の心は のどけからまし」を思い浮かべるのですが、今日は新渡戸稲造です。新渡戸さんは、有名な著書「武士道」の中で、「武士道は、日本社会の基本システムであり日本の象徴たる桜の花のようなものである」と言っています。

JR車内の広告テレビで風邪薬の宣伝を見ました。お侍さんが果たし合いをする場面です。片方のお侍さんがクシャミをした瞬間、「スキあり!」と斬られてしまいます。斬ったお侍さんは決闘前に風邪薬を飲み、斬られたお侍さんは飲まなかったからだという訳です。

さて、新渡戸さんがこの宣伝を見たらどうコメントするでしょうね?

私の感覚では、これは日本人の価値観ではない。先輩のIさんもこの広告を見て不愉快になったと言っていました。日本人の価値基準は、新渡戸さんが日本人の誇りとして世界に訴えかけたものとは違うものに変化してきているようです。

新渡戸稲造は「武士道」の中で、バラと桜を例に出して欧米人と日本人を比較しています。

「ヨーロッパ人は、バラの花を賞賛するが、私たち日本人はそれを共有する感覚は持ち合わせていない。バラには桜花の持つ簡素な純真さに欠けている。それだけではない、バラはその甘美さの陰にトゲを隠し、執拗に生命にしがみつく。まるで死を怖れるがごとく、散り果てるよりも、枝についたまま朽ちることを好むかのようにである。しかもバラは華美な色彩と濃厚な香を漂わせる。いずれをとっても桜花にはない特性である」。

私たちの愛する桜花は、その美しい装いの陰に、トゲや毒を隠し持ってはいない。自然のなすがままいつでもその生命を捨てる覚悟がある(which it is ever ready to depart life at the call of nature)。その色はけっして派手さを誇らず、その淡い匂いは人を飽きさせない(whose colors are never gorgeous, and whose light fragrance are volatile, ethereal as the breathing of life)」。

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6 件のコメント:

  1. 日本人は、桜に特別な感覚を持っていますね。私もそうです。葉が咲く前に花が咲いて、限られた期間だけ一斉に開花する神秘的な花です。
    この週末はイースターです。私はワシントンDCに桜を見に行ってきます。

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  2. 本当に桜の花は日本人を現していますね。ただ、最近ではその本質も少々変化してきているのが気になります。トゲのある桜ができたりして!?

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  3. 台湾の人々も日本の桜に特別の感情をもっているようです。
    桜の季節には台湾日本間の飛行機は全て満席です。(わたしの来週からの出張のチケットはいつもの倍の価格、しかも帰りの便がキャンセル待ちです。。。)
    もしかすると台湾の人々の桜に対する感覚の方が、今の日本の人々のものよりも武士道に近かったりして…。
    そういえば、新渡戸稲造さんもしばらくの間台湾総督府にいらしたことがありましたね。

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  4. 日本の感覚が解る台湾の人達を、裏切らないようにしたいですね。

    昨日桜を見にワシントンに行ってきました。大変な賑わいで、桜の木下でピクニックしている人も沢山いました。どの人種も桜の花が好きなようです。

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  5. 手塚治虫さんの「アドルフに告ぐ」の1シーン。
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    在日ドイツ人の少年が、日本人のおじさんにこう聞かれます。
    「おまえさんに大和魂がわかるのかね?」
    「ひさかたのォ 光のどけき春の日に しづこころなく花の散るらむ、やろ。」
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    同作品の別のシーンでは、大和魂を「パッと咲いてパッと散る」と表現していました。
    同氏の「MW」という作品にもこの和歌が引用されています。

    アトム、ジャングル大帝などのラストシーンからも感じられるのですが、手塚作品には滅びの美学といったものが根幹にあるのかもしれませんね。

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  6. パッと咲いてパッと散るだけでなくて、みんな一緒に咲いて、みんな一緒に散るところも日本人に似ていますね。

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