2010年8月29日日曜日

ジョージ・オーウェルの「1984年」

昔は同じ本を何度も読むことはなかったのですが、ここ数年同じ本を何度も読むようになりました。やはり、価値のある中味の詰まった本は何度でも読めます。経済的でもあります。

久しぶりに、ジョージ・オーウェルの「1984年」を読んでみました。改めてこの本のすごさが分かります。以前このブログに、「蟹工船」を読むならジョージ・オーウェルの「動物農場」を読んで欲しいと書きましたが、高校生や大学生には「1984年」を読んでいただきたいと思います。その後でもし時間に余裕があれば「1Q84」でしょう(私は「1Q84」も「ノルウェーの森」も読んでいませんが、、、)。

「1984年」の舞台となる国は思想や言論に厳しく統制が加えられています。物資は欠乏し、国民は、テレスクリーンによって昼夜を問わず屋内でも屋外でも行動が監視されています。言語はニュースピークというものです。ニュースピークは、思考を単純化し、思想犯罪の予防を目的として成立した新語です。語彙の量を極端に少なくし、政治的・思想的な意味を持たないようにされて、この言語が普及すれば、反政府的な思想を表現することができなくなるというものです。中国語のピンイン(ローマ字表記)や朝鮮語のハングルなんていうのはニュースピークの系統かも知れませんね。最近の中国の若い人と話をしていても、彼らが漢字の意味や語源にあまり興味を示さないのに驚きますから。

「1984年」に出てくる国には真理省(The Ministry of Truth)があります。真理省は声高にプロパガンダを叫びます。政治声明、党組織、テレスクリーンを管理するのです。また、新聞などを発行しプロレフィード(軽薄な小説・映画・音楽)を供給するほか、歴史記録や事実を党のイデオロギーに合うように改ざんし、常に党の言うことが正しい状態を作り出します。プロレフィードと言うのは、プロレのフィード、つまり、「大衆に与えるエサ」という意味です。面白いですね。恐いですね。日本のテレビや新聞・雑誌はプロレフィードになっていませんか?

私はノンアルコールの「缶(カン)」ビールはダメだったですが、小説もジョージ・オーウェルの「1984年」が素晴らしいと思います。

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4 件のコメント:

  1. 1984年も1Q84も読んだ事が無かったので、早速、「1984年」を読みました。(新版ハヤカワepi文庫という読みやすい版です)

    まさに、暗くじめっとした冷戦時代の社会主義国家のイメージですね。ソ連が崩壊したのが91年で、もう19年も経っています。今の学生は、冷戦時代は歴史的過去でしかないので、二次大戦後の時代背景を認識した上で「1984年」を読むべきだと思います。そうでないと、別の星の出来事のように感じてしまいそうです。

    監視されている恐怖、人間らしさを持てない不自由、ぞっとします。中でも印象的なのが、階級社会を維持するために戦争による貧困と無知を強いていることでした。

    今の世の中でも、政治家は「党内局」と同じような監視する側の目線で「国民」をコントロールしようとしているような気がします。支配階級に留まる為にどうするべきかが第一優先され、国民を問題の本質からそらせる。

    現在の物質的に豊かで、命の安全もある程度守られている状況は1984年で描かれている世界と比べ様もないほどすばらしく感じられますが、思想的貧困を招かないためにも政治や報道を疑う姿勢はとり続けたいと思いました。

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  2. 「1984」の中に、現在を制する者は過去を書き換える、過去を書き換えるものは未来を制する、、、といった記述がありました。恐いですね。今週(9月2日)ロシアがやっていることなんて、まさにこの通りですね。

    やはり自尊心や自信のない国(人もそうですが、、、)は亡びると思いますよ。学校の先生たちには子どもに自尊心を植え付ける接し方をしてもらいたいですね。

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  3. 米ソ冷戦時代のことも、文化大革命のことも、イスラエルのことも、何にも気にしないで日本人は生きています。
    日本国内のことだって、あらゆるところが矛盾だらけです。
    そういうことを考えさせないようにさせている力が、どこかで働いているように思えるのです。
    おススメの「すばらしい新世界」も読んでみようと思っています。

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  4. その後に、ホッファーの「情熱的な精神状態」を読むと、ホッファーが何倍も楽しめること請け合いです。

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