2010年8月6日金曜日

アメリカの歴史教科書が教える日本


アメリカのルース大使が広島の平和記念式典に出席しましたね。

今後、アメリカが日本を見捨てるかどうか分かりませんが、かつてほど重要視しなくなりました。アメリカにも余裕がなくなったし、中国も予想以上のスピードで強くなってきた。「日本は困ったものだけど、暫く放っておくしかないね」だろうと思います。

さて、アメリカの学校では真珠湾、広島・長崎への原爆投下までの大東亜戦争をどう教えていると思いますか? (「大東亜戦争」と言う呼称を使ってはいけないと命令したのはアメリカ占領軍ですね。ご存じでしたか?)。

アメリカの小学校の授業で日本は出てきません。小学生ではアメリカが戦争をした相手が中国なのか日本なのか恐らく分からないでしょうね。大学では個人が特別に選択しないと、日本に関することなんて教わる機会はありません。ですので、日本に関して何らかのことを習うとすれば、中学と高校の時だけです。つまり、アメリカ人の日本に関する歴史感覚なんて、この程度のものなのです。

今、私の手元に息子から借りてきた高校の歴史の教科書があります。「America A Narrative History」というアメリカ史の教科書で、厚さが6センチちょっと、重さは2キロもある本です(上の写真)。息子はすでに社会人ですから、高校の時に使った歴史の教科書なんかとっておく必要はないのですが、彼は「これは良い本なんだ」と本棚にキープしています。この教科書は、植民地時代以前(先コロンブス期)からクリントン政権までをカバーしています。一般的なアメリカ合衆国史です。

真珠湾から広島・長崎への原爆投下の部分を見ても、特にアメリカを正当化するような記述はありません。当たり前ですが、日本の教科書のように自虐的にもなっていません。単に歴史的事実を時系列的に伝えているだけのように見えます。 勿論、広島・長崎が非戦闘員に対する無差別攻撃であり国際法違反だとは書いてありません。原爆のページに掲載されている写真は、焼けただれた時計の写真です(上の写真の左上)。原爆のキノコ雲の写真はありません。

日本との戦争に関しては、日本という国の成り立ちや戦争に至る背景が複雑すぎて、先生でも理解している人は少ないのだと思います。アメリカの中学・高校で教える第二次世界大戦は、対ドイツ、つまり、ヨーロッパの戦争が中心です。ナチスドイツですね。ファシズムです。そこには親衛隊(SS)を従える悪党のヒットラーがいる。それをヒーローであるアメリカ軍が成敗にいく。分かり易いですよね。

日本の場合はどうでしょうか?天皇はヒトラーのようでもないし、誰もが分かる大悪党の存在が見あたらないのです。南京大虐殺をホロコーストのように位置づけようとしたこともあったようですが、よく調べるとどうも事実関係が怪しい、、、、だから教えられない。私はそうだと思いますよ。正当性がないのは明かだから、東京裁判なんて復讐劇は絶対に説明できない。マッカーサーの占領政策だって、「言論弾圧だろう!」と生徒たちは黙っていないでしょうしね。

ただ、アメリカの歴史教科書は、アメリカ国内の政治・経済の時代背景や、戦後の冷戦にいたるソ連との関係に関しては、かなり紙面がさかれています。歴史の大局観を掴ませ、当時のリーダーの意思決定プロセスを学ばせようとしているのでしょうね。

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4 件のコメント:

  1. アメリカの教科書が、”リーダーの意思決定プロセスを学ばせる”は、非常に重要なポイントだと思いました。二次大戦について色々な論評があるのは自由ですが、教科書が自虐的に書くのは、間違えですね。その教科書で勉強して自国嫌いの人間ができてしまう。
    それから、二次大戦の事で、どうしても解らない事があるのです。開戦の動機や戦術は分かるのですが、日本は何を達成して勝ちとしたかったんでしょうか。もし、学校で二次大戦の事を教えるのであれば、何を持って勝ちとするかという戦略なしに最後は精神論だけで戦った事が問題であると、教えてほしいですね。自虐ではなく教訓として。

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  2. 大東亜戦争だけを論じるのではなく、幕末からの全ての戦争を一連の流れとして考える必要があるのだと思います。

    日本軍の戦いは、稚拙な部分もいっぱいあったでしょうが(始め方、進め方、終わり方)、①自衛の戦いであった点、②欧米列強のアジア進出・支配からの解放であった点、この2つを無視して軍部の愚かさや戦争の侵略性のみを語るのは間違っていると思います。あのマッカーサーでさえ、戦後アメリカ政府の外交委員会で「日本は自衛のために闘った」と発言したのですから。

    昨日、経済産業省HPの産業構造改革の資料を見ていたら、経済再生のアクションプランとしてグローバル人材の育成と書いてありました。劣等感だけを植え付ける歴史教育と知識の詰め込みで偏差値を競う日本の教育システムでは、グローバルな日本人なんて育たないと思います。自尊心や自立心が無視されているからです。しかし、グローバル競争の中で基本となるのは、自尊心や自立心なのだと思います。

    この資料にはグローバル人材育成のベストプラクティス(?)としてIBMとサムソンの例が出ていました。

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  3. 私も、その2点には全く同意し、自発的侵略ではないと理解しています。しかし、解らないのは、軍部や外交が何をもって戦争を勝ちとするかと考えていたかです。目的無く戦っていたとは思えないのです。

    ところで、グローバル人材はいろいろなところで議論されていますが、その定義はなんでしょうかね。例に挙げられた会社の人材育成プログラムは日本人向けに作られたものではないので、日本人はご指摘されている自尊/自立心と弱点を補強する努力をしないと、グロバールでは渡り合えないですね。

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  4. 「何をもって戦争を勝ちとするか?」。戦争の始め方、進め方、終わり方にも関係しますが、八紘一宇でアジアを開放した後のアジアや世界に関して具体的なイメージを描いていなかったのでしょう。アジアの人たちも、最初は日本がアジアを開放することに賛成していたのでしょうが、途中から怪しくなって、アメリカが提唱する自由と民主主義のほうが素晴らしく思えてきたのでしょうね。

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