2010年11月16日火曜日

なぜ『三四郎』の広田先生に登場してもらったか?

先週のブログで「三四郎」の広田先生の言葉を引用しました。佐伯教授が産経紙面で明解に説明されていましたので、ご紹介します。さすがに大学の先生ですね。

グローバリゼーションが進めば進むほど、各国は自国の利益を追求します。つまり、ナショナル・インタレストが最大限になるように行動します。そして、それが突き進むとウルトラナショナリズムになり、国家が成熟していない場合、戦争となるのです。第一次世界大戦前のドイツだったり、先の大戦前の欧米の植民地政策やそれに続いた日本ですね。佐伯教授が「経済問題の根底には『グローバリズム』という現実があり」と言われているのは、そういったことだと思います。そして、今の日本の問題の根底には日本の変則的な国家体制がある。敗戦後65年もの間、本質的な問題解決を先送りしてきた訳です。これが「三四郎」の広田先生の言葉を引用して私が伝えたかったことでした。

【日の蔭りの中で】京都大学教授・佐伯啓思 政治への過剰な期待と失望 (2010.11.14 03:23 産経新聞)

(前略)

尖閣強硬論の世論は軍備増強や憲法改正に賛成するのであろうか。必ずしもそうとも思われない。また、菅政権を批判する自民党もそこまではいわない。そうだとすれば、この問題についても、多くの人々はただ感情的な不満をぶつけているだけということになる。

こうしたことが民主政治をきわめて不安定にしてゆくように思う。経済問題にせよ、防衛問題にせよ、今日の課題は、容易に解答が得られる種類のものではない。経済問題の根底には「グローバリズム」 という現実があり、防衛問題の根底には「平和憲法プラス日米安保体制」という変則的な国家体制がある。これらのことがらを先送りにして小手先の対応を迫られる政治にできることは限られている。にもかかわらず政治が問題を解決できなければ、人々はすぐにその政権を見限る。その結果、政治そのものが著しく不安定になってゆくのだ。それは政権政党が民主党であろうが自民党であろうが同じことであって、民主政治というものは、いくら国民が主権者だといっても、政治に対する過度な期待と過剰な失望を自制しなければうまくゆかないであろう。

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