TVドラマ「水戸黄門」の再放送を見ていたら、だんだんと頭の中が江戸時代になってきました。
江戸時代の寺子屋をご存じですか? 今、巷にある寺子屋と称する塾じゃないですよ。江戸から明治初期にかけての、庶民を対象とした日本の教育システムです。 明治維新の頃には全国で3万ほどの寺子屋が存在したそうで、この数は、現在の全国小学校数を上回るものでした。
私は教育の専門家ではありませんが、寺子屋での学習形態は非常に優れたものだと思います。なぜかと言うと、寺子屋の教育は「人と人との関係を重視したもの」だからです。 今では多くの学校や企業で e-ラーニング と言って、コンピュータによる学習の効率化が行われていますが、少々教育の本質を見誤っていますね。コンピュータはあくまでも補助的なツールです、コンピュータで人格は形成されません。
寺子屋の教育内容にもPROs&CONs(良い点・悪い点)があるのですが、コンサルタント育成にも通じるところがあるし、アメリカのMBAと言われるビジネス・スクールの授業にも似たところがあります。少しばかり特徴を見ていきましょう。
- 教師と生徒の関係よりも、お師匠さんと弟子の信頼関係で成り立つ。知育・体育の土台としての徳育を重視した。
- 授業内容は多種多様。師匠の人柄を学び取ることが中心となるため、内容は師匠のスペックで決まる。つまり、リスクもある。
- 子どもたち同士が対面して座る。教師が前に立って教える形態ではない。師匠はファシリテ―タのような役割である。「教える」ではなく、「学ぶ」が主体。
- 先に進んだ子どもが遅れた子どもを教える。教育メソッドで一番効果があるのは人に教えることで、理にかなっている。また、強者は弱者をかばうという精神も生まれる。
- 習字(書写)が基本。 文章を読み、文章を書き写すことによって文字を憶え意味を理解する。現在の学校の書道の時間とは意味が違う。
- 往来物(往復書簡などのビジネスレター)を書写のテキストとする。自然と「誰に(WHO)、何を(WHAT)、何時(WHEN)、何処で(WHERE)、何故(WHY)、どのように(HOW)」を学ぶ。これは、MBAで行われているケーススタディにも通ずるところがある。
江戸時代は、武士と庶民の身分が厳格に別れていました。武士には藩校というものがあり、為政者のためのエリート教育が行われました。ここで言う国とは藩のことですね。一方寺子屋は、庶民の教育システムです。社会が進歩して商業や物の流通が盛んになるにつけて、庶民の間でも読み書き算盤の必要性から寺子屋のような学校が生まれてきました。教育熱が強まり予習復習と子どもは遊ぶ時間がなくなり、現在の教育システムの弊害は、江戸時代に芽生えたのではないかと疑う部分も見受けられます。
今後の日本の教育を考える上で、江戸時代の寺子屋や藩校の存在は非常に参考になると思います。
明治5年の学制と終戦直後のGHQによる学制改革は、前者がフランスを真似た学制で、後者はアメリカ占領軍による学制改革だとしても、いずれにせよ寺子屋や藩校の良い点をかなりゼロリセットしたのですね(流行の言葉だとゼロベース)。日本再生のための喫緊の教育改革は、日本人による日本人のための改革であるべきですね。
***
0 件のコメント:
コメントを投稿