2013年9月27日金曜日

唐招提寺


奈良って、いつまでたっても京都のようにメジャーになりません。 だから、奈良なんでしょうね。 本当の日本精神があるのかもしれない。

古寺巡礼

和辻哲郎

西の京――唐招提寺金堂――金堂内部――千手観音――講堂

堂の正面をぶらぶらと歩きながら、わたくしは幸福な少時を過ごした。大きい松の林がこの堂を取り巻いていて、何とも言えず親しい情緒を起こさせる。松林とこの建築との間には確かにピッタリと合うものがあるようである。西洋建築には、たとえどの様式を持って来ても、かほどまで松の情趣に似つかわしいものがあるとは思えない。パルテノンを松林の間に置くことは不可能である。ゴシックの寺院があの優しい松の枝に似合わないことも同様であろう。これらの建築はただその国土の都市と原野と森林とに結びつけて考えるべきである。われわれの仏寺にも、わが国土の風物と離し難いものがある。もしゴシック建築に北国の森林のあとがあるとすれば、われわれの仏寺にも松やひのきの森林のあとがあるとは言えないだろうか。あの屋根には松や檜の垂れ下がった枝の感じはないか。堂全体には枝の繁った松や檜の老樹を思わせるものはないか。東洋の木造建築がそういう根源を持っていることは、文化の相違を風土の相違にまで還元する上にも興味の多いことである(1919年)。

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