日本列島が、ひょっこりひょうたん島みたいに海を漂えたらいいのだが。
世界情勢も、もう少し気楽に眺められる。
イスラエルがガザを攻撃した、イランが報復するかもしれない、ホルムズ海峡が緊張している――そんなニュースが世界を駆け巡っています。2009年1月の話です。
テレビをつけると、専門家が地図を指しながら解説していますが、正直に言うと、中東の問題はなかなか簡単には理解できません。
無理もありません。
この地域の対立は、近代の政治というより、はるか昔の宗教と歴史にさかのぼる話だからです。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教。
三つとも同じ源流を持っているのに、聖地をめぐって二千年以上も争い続けています。人間というのは、信じるもののためならどこまでも戦える生き物らしい。宗教というものの力の大きさを思い知らされます。
もっとも、日本人にはこの感覚がなかなか分かりません。
日本には宗教がないわけではありませんが、神社もあればお寺もあるし、クリスマスも祝う。お正月には初詣に行って、結婚式は教会で、葬式は仏式という具合です。世界の宗教の人たちから見たら、かなり不思議な民族でしょう。
だから中東のニュースを見ていると、どうしても距離感があります。
「また戦争をしているのか」と思いながら、その横で日本では、花粉症の話とか、桜の開花予想とか、野球、そんなニュースも同じ調子で流れています。
世界がきな臭くなるほど、日本の空気は妙にのんびりしているように感じるのです。
もちろん、日本はこの問題と無関係ではありません。
石油のほとんどを中東に頼っている以上、ホルムズ海峡が封鎖されれば日本経済は大きな打撃を受けます。遠い国の戦争のように見えても、日本の生活とはしっかりつながっています。
それでも日本人の感覚は、どうも中東の人たちとは違います。
宗教や歴史のために戦争をするという感覚が、どうしても実感として理解しにくいのです。
世界にはアメリカ、中国、ロシアといった大国があり、それぞれが自分の国益を考えて動いています。中東の戦争も、宗教だけでなく、資源や軍事や政治が複雑に絡み合っています。
その中で、日本という国は、なかなか難しい場所にあります。
安全保障ではアメリカに頼り、エネルギーでは中東に頼り、経済では中国とも深く結びついている。どこにも完全には属していないのに、どこからも影響を受けるという立場です。
もし日本列島が、子どものころに見ていた
ひょっこりひょうたん島のように、海の上を自由に移動できる島だったらどうでしょう。
世界がきな臭くなったら、太平洋の真ん中あたりにそっと漂っていく。
情勢が落ち着いたら、またアジアの近くに戻ってくる。
そんな便利な機能が日本列島についていれば、日本人はかなり安心して暮らせるかもしれません。
残念ながら、そういう機能はついていません。
日本列島は動かないし、世界情勢のほうが動いてきます。
結局のところ、日本はこの複雑な世界の中で、どうやって立っていくのかを考え続けるしかありません。
世界がきな臭くなるたびに、ひょうたん島を考えます。
そして同時に思うのです。
それでも今日も日本では、電車は驚く精度で走り、コンビニにはお弁当が並び、夜になるとテレビではバラエティ番組が始まります。
世界は騒がしいのに、日本はいつもどこか平和です。
それが、この国の不思議なところです。
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