ハル回顧録 (2001年 中公文庫)
近隣諸国の歴史教科書は、多くの嘘や偏向した知識とで書かれています。 アメリカの教科書だって、アメリカの都合のいいように書かれています。 それは仕方がないことです。 自分の国に誇りが持てないような教育を自国民にすることは、義務教育の目指すところではないからです。
私が一番の問題と思うのは、日本人はもっと自国の歴史を史実に基づいて直視する眼を持つ必要があることです。 正しい歴史認識は日本人に一番必要なのです。 晴らせる汚名は晴らしておいたほうがいいのです。
ニューヨークに住んでいると、12月になると必ず話題になるのが真珠湾奇襲攻撃です。 そう、「Remember Pearl Harbor」です。 日本人は騙し討ちをする(Sneak Attack)卑怯者だと思われているのです。
「真珠湾が奇襲だったのか?」、「日本は宣戦布告なしで真珠湾を攻撃する計画をもっていたのか?」。 アメリカ人との酒席で話題になった場合、ユーモアを交えてさらりとかわせないといけません。でないと、アメリカ人組織で本当のマネジメントチームの一員になれないからです。
相手を説得する必要はありません。ロジカルに自分の意見を主張できればいいのです。 そのためには、自国の歴史を出来る限り客観的に知っておく必要があります。 様々な意見があるのは当然で、「色んな立場の見方はある」でいいのです。「It is
controversial、、、」(どちらとも言えない、議論の余地があるという意味です)と話を切り出せばいい。 この「controversial」はマジックワードです。
真珠湾奇襲攻撃に関しては、必ず読んでおいたほうがいい書物があります。 ルーズベルト大統領の国務長官であったコーデル・ハルの回顧録です。
アメリカの日本に対する最後通牒だと言われているハル・ノートを知っている人は多くても、ハル長官が当時を振り返って何を言っているか理解している日本人はほとんどいないと思います。 しかし、これは日本人全員が理解しておくべきことです。 なぜならば、「日本人は奇襲を計画した卑怯な民族だ」という汚名を着せられているかも知れないからです。 着せられた汚名は晴らして、名誉は挽回しておかなければいけません。
ハル長官は自伝の中で、「ワシントンの日本大使館よりも先に、日本からの野村駐米大使宛の長文の暗号電文を解読して内容を理解していた」と書いています。 日本大使館でのタイプが間に合わなかったら、日本政府が野村大使に指示した時間に自分と会見し、電文の内容を口頭でもいいから伝えるべきだったと述懐しています。 当事者であるハル長官の言によると、日本は宣戦布告なしに奇襲を計画していたのではないことが分かります。
これだけで十分なのです。知っているのと知らないのでは大きな差を生むのです。
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