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散歩の続き
『眉山』といっても徳島市にある山ではありません。 太宰治が亡くなる3ヶ月前に発表された短編です。 この作品は、敗戦後から玉川上水に入水するまでの太宰治の心情がよく表現されていると思います。
「そうですか。……いい子でしたがね」。
思わず、溜息と共にその言葉が出て、僕は狼狽し、自分で自分の口を覆いたいような心地がした。(『眉山』 太宰治 1948年)
久しぶりに新宿の飲み屋に行った主人公は、「眉山」とあだ名をつけた飲み屋の給仕の余命が短いことを知らされて、これまでの彼女の行動の理由を知るところとなり、慚愧の念に駆られます。 狼狽し、自分で自分の口を覆いたいような心地がしたのです。
上の写真は三鷹駅南口の太宰が『眉山』を含む最晩年の作品を執筆した下宿(仕事場)があったあたりです。 毎日が「自分で自分の口を覆いたいような心地ばかり」の私は、慚愧の念をきれいさっぱりと忘れ去って武蔵野の朝を散歩するのみです。 だから自殺しないのでしょう。
太宰治文学サロン
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