出版不況が続く中で、自己啓発本が売れているそうです。
読書指向もアメリカ的になってきたのでしょうか?色んな面で日本はアメリカの後を追いかけています。グローバル化はアメリカ化だと言っている人もいます。私の感覚では日本は10~30年前のアメリカのようです。
アメリカ伝統の「ポジティブ産業」も日本にやって来ているようです。
英語で con man というのは信頼(confidence)を売る詐欺師のことです。短時間で信頼を勝ち得て(いわゆる騙して)偽物を売りつける詐欺師。アメリカ的自己啓発本って、なるほどというのもありますが、多くは con manを速成(促成)する手段なのです。
アメリカの日曜の朝に放送しているテレビ伝道も多くの宗教家も、宗教(神学)というよりも自己啓発産業です(life coach といわれる類です)。自己啓発本なんて、con man の重要なマーケティングツールだと思います。
「ポジティブ産業」に騙されちゃいけません。振り込め詐欺だけが詐欺じゃないのです。
情熱的な精神状態に入ってしまうと一人になって頭を冷やすことは難しい。 自立してない、つまり、個としての考えがないから、声高に叫ぶスローガンに身を任せるのが心地よいのかも知れません。
ニーチェは、一人ぼっちになって迷路の中を進んでいくこと、身の回りだけでなく遠くまで見渡せる眼を持つこと、新しい音楽を聞き分ける耳を持つこと、これらの事が意志の力であり、大切なことだと言っています。 福沢諭吉のようでもあり、小林秀雄のようでもあります。坂口安吾が『堕落論』で言っていることも同じですね。
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